(英エコノミスト誌 2016年2月27日号)
中国・上海にある宝鋼集団の工場(2013年6月6日撮影、資料写真)。(c)AFP/PETER PARKS〔AFPBB News〕
中国の余剰生産能力は中国経済を傷つけ、貿易相手国をいら立たせている。
「供給過剰は世界的な問題である。世界的な問題にはすべての国による協調的な努力が必要だ」
中国の商務相、高虎城氏は、2月23日に北京で開かれた記者会見でこのような挑戦的な言葉を口にした。高氏はあらゆる国々が責めを負うべきだと匂わせ、中国の工業品輸出の増加に対する世界的な反発に抵抗した。
供給過剰は確かに世界的な問題だ。だが、高氏が言うような状況かというと、必ずしもそうではない。
大量に輸出される中国の工業製品は至るところで市場にあふれかえり、世界中でデフレ圧力に寄与し、生産者を脅かしている。このような供給過剰が、多くの国の過剰生産能力がもたらした結果であれば、中国だけが槍玉に挙げられるべきではないという高氏の主張は正しいだろう。だが、事実はそうではない。
例えば、中国の鉄鋼の供給能力は、日本と米国、ドイツを全部合わせた鉄鋼生産量よりも多い。コンサルティング会社ローディアム・グループの試算では、2014年までの10年間で世界の鉄鋼生産量が57%増加するが、中国の製鉄会社がこの増加の91%を占めているという。
紙から船、ガラスに至るまで、産業という産業で構図は同じだ。中国は今、内需の縮小に直面し、供給過多に陥っている。だが、それでも生産能力の拡大は続く。中国のアルミ精錬能力は、今年さらに10%増加する見込みだ。また、格付け機関フィッチのイン・ワン氏によると、中国の石炭鉱業では今後2年間で、グロスで約20億トンの新規能力が稼働するという。
中国欧盟商会(中国の欧州連合=EU=商工会議所)が先日公表した詳細なリポートは、製造業の過剰生産能力が2008年以降急増したことを明らかにしている(図参照)。中国の中央銀行は最近、工場だらけの沿海部の省、江蘇の製造業者696社を調査し、設備稼働率が「著しく低下」していることを発見した。
調査会社オックスフォード・エコノミクスのルイス・カウジ氏は、2007年には中国製造業の「生産ギャップ」――生産と生産能力との差――が全体としてゼロだったと試算している。それが2015年には製造業全体で13.1%となり、重工業でははるかに高くなっている。
幽霊よりも怖い
近年、中国の不動産バブルが盛んに取り沙汰され、「幽霊都市」に関する辛辣な報道が相次いでいる。確かにあちこちで不動産に対する過剰投資があった。だが、空っぽとされる都市の多くは最終的には埋まる。
それよりも、工業製品に対する中国の異常な過剰投資のほうがはるかに大きな問題だ。
調査会社コンファレンス・ボードのジェネット・ハオ氏の分析では、2000年から2014年にかけて鉱業装置とその他の産業機器の製造に対する投資の伸びが不動産への投資よりはるかに大きかったことが示されている。
この過剰投資によって、多くの国営企業が景気減速に対して脆弱になり、利益の上がらないゾンビ企業になっているのだ。