米国の民意はどこへ向かうのか。「トランプ現象」はもはやブームではない。…[続きを読む]
内部通報を理由に不当に配置転換されたとして、オリンパスの社員が損害賠償…
・最新の社説は朝刊休刊日を除き午前5時半ごろ更新します。(編集の都合などで遅れる場合があります)
内部通報を理由に不当に配置転換されたとして、オリンパスの社員が損害賠償を求めていた訴訟で和解が成立した。社員は配転を受け入れる一方で1100万円を得ることになった。
この社員は、先に配転の無効を主張して提訴し、最高裁まで争って勝訴した。ところがその後も元の職場に戻れず、子会社への転籍などを求められたため、改めて損害賠償訴訟を起こしたという経緯がある。
和解に至ったとはいえ、内部通報をきっかけに訴訟を相次いで起こすことになった社員の負担を考えれば、通報者を守る仕組みの強化が欠かせない。
公益通報者保護法が施行されて、まもなく10年になる。企業の社員ら通報者の保護を通じて、消費者を守り社会経済の発展につなげるのが法律の目的だ。おりしも、消費者庁が設けた有識者検討会で、制度の実効性を高めるための議論が大詰めを迎えている。先延ばしされてきた法改正に向けて、納得できる報告書をまとめてほしい。
オリンパスの社員は通報者への報復に対する罰則が必要だと訴えている。検討会でも刑事罰や行政処分を導入すべきだとの意見が出ているが、論点はそれだけにとどまらない。
保護の対象となる通報者は「労働者」に限られる。役員や退職者、取引先の関係者などに広げることが必要ではないか。
国民の生命や財産などにかかわる約450の法律に違反する不正に通報対象を絞っているが、もっと広げるべきだ。
通報者が不正に関わっていたり、通報内容を裏付けるために証拠を持ち出したりした場合の免責規定を設け、通報を促すことを考えてはどうか。
制度の強化とともに、問われるのは企業の姿勢である。社内に通報窓口を設けるなど体制の整備は進んでいるが、行政機関や外部への通報に対する警戒感は根強いようだ。
しかし、不正会計に揺れる東芝の例を思い出してほしい。長年の水増しが表に出たのは、社内から外部への通報がきっかけだったという。社外取締役を積極的に活用する「委員会設置会社」にいち早く移り、企業統治のお手本とされてきた東芝も、正常化への決め手となったのは事情をよく知る内部関係者からの告発だった。
通報先が社内か社外かを問わず、広く社員の声を吸い上げる制度を充実させる。通報者をしっかり守りながら、正すべき点を正していく。それが企業としての当然の務めであり、発展への礎ともなるはずだ。
PR比べてお得!