内部告発が相次ぎ、特捜が動いた
日本が世界に誇った電機業界が崩壊している。
東芝は、2016年3月期決算で7100億円の赤字を計上、1万人のリストラに踏み切る。シャープは、台湾の15兆円企業「鴻海精密工業」への身売りを決めた。そんな惨状に追い打ちをかけるように、東京地検特捜部と証券取引等監視委員会による東芝粉飾決算事件の捜査が始まる。
特捜部は、2月29日、東北地方の高速道路復旧工事談合に絡んだ舗装10社11人を在宅起訴。次のターゲットは東芝粉飾事件となる。
売上高6兆円の大企業だけに、当初、証券監視委は慎重な姿勢だった。2000億円の利益水増しだが、「赤字」を「黒字」とする赤黒転換の悪質さはない。従って、当初は、行政処分が適当だとして課徴金処分に踏み切り、約73億円の納付命令を出した。
本来ならこれで終結だが、東芝からの内部告発が相次ぎ、証券監視委の独自調査のなかでも、歴代経営陣が不正につながることを承知で利益のかさ上げをしていたことが判明した。
これを検察への告発を前提とした「特別調査課案件」としたのは、昨年7月、証券監視委事務局長に就任した佐々木清隆氏。特別調査課の課長時代、カネボウやライブドアの大型粉飾事件を特捜部とともに積極的に摘発。上場企業に色濃く残る「粉飾の土壌」に、改めて切り込む覚悟を固めたという。
それを後押ししたのが佐渡賢一委員長だ。年内に3期9年の任期を終える佐渡氏は、「課徴金処分でスピーディな処理」は確立したものの、その分、告発案件が減って、証券監視委は「市場の番人の迫力が薄れた」と批判されることが増えた。
佐渡氏は、“汚名”を挽回するように、東芝事件の経過を聞き、「やれる」と、自ら判断を下したという。