2016年3月3日05時05分
■介護現場 虐待生まぬために〈下〉
介護職員による虐待の要因は、過酷な勤務実態にあるようです。虐待を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。そのヒントとして、体や心にかかる負担を減らして気持ちのゆとりを持とうという取り組みを紹介します。専門家の意見も聞いてみました。
高齢者施設の介護職員が肉体的、精神的に追い詰められた状況にあると、入居者への接し方は乱暴になりがちだ。
排泄(はいせつ)や入浴のたびに高齢者を抱えて車いすからトイレや浴槽に移動させる業務は肉体的な負担が大きい。こうした負荷を軽くするため、リフトを導入している施設がある。
大阪府枚方市の有料老人ホーム「グッドタイムリビング香里ケ丘」で働く岸田達也さん(28)は「リフトを使うと体が楽。体の負担が減ると、心のゆとりが出来る」。
ホームを運営するオリックス・リビングが別のホームで職員に調査したところ、背中や腰の痛みで仕事がつらいときが「あった」という回答がリフト導入前の約8割から導入後には約2割に減った。
介護現場には「介護は人の手でやるべきだ」という考え方が根強いが、入居者からは「機械(リフト)は気が楽。私は重いから、若い人たちがかわいそうで」(87歳の女性)と歓迎の声もあがる。腰痛を理由に離職せざるを得ない職員が減れば人手不足対策にもなる、との見方もある。
一方、介護現場では事故を起こさないようにピリピリしたり、入居者の状態が悪くなっていく様子を目の当たりにして後ろ向きな気分になったりしがちだと指摘する声は多い。こうした精神的な負担から職員の意欲が下がり、それがケアの低下にもつながる。
■「にやりほっと」でプラス思考に
こうしたなか、意欲を上げるヒントになるのが、東京都杉並区の有料老人ホーム「ライフ&シニアハウス井草」の取り組みだ。
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朝日新聞社会部
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