和解協議続行 代執行訴訟、4月13日に判決
2訴訟が結審 国土交通相決定の訴訟判決は3月17日に
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設計画で、翁長雄志(おなが・たけし)知事による名護市辺野古沿岸部埋め立ての承認取り消しの是非を巡る二つの訴訟が29日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎(たみや・としろう)裁判長)で結審した。判決期日は、国が知事に取り消し撤回を求めた代執行訴訟が4月13日、知事の取り消しの効力を執行停止とした国土交通相の決定についての訴訟が3月17日に指定された。代執行訴訟での和解協議は継続されることになり、もう一つの訴訟でも和解が勧告された。
閉廷後に、裁判所が国と県それぞれと非公開で和解案について協議した。県側代理人によると、代執行訴訟で示していた「暫定的」な和解案について手続きなどをより具体化したものを多見谷裁判長が示し、二つの訴訟でさらに検討するよう促した。
高裁支部は代執行訴訟で、移設前提の「根本的」と、国が訴訟を取り下げて移設を中断する「暫定的」の2案を提示している。県側はこれまでに暫定的な案については前向きに検討していくことを表明しており、県側の代理人は「裁判所が暫定的な案に絞ってきているとの印象だ。県側は根本的な案は検討していない」と話した。
代執行訴訟では、29日の第5回口頭弁論で、稲嶺進・名護市長の証人尋問を実施。辺野古沿岸部に新基地が建設されることによって「騒音被害や事件・事故の増加など地域住民の生活の安定を脅かす」と指摘し、環境保全については「潮流の変化などで生態系が壊される。自然を生かした街づくりへの影響も大きい」などと述べた。
また、代執行訴訟に先立って行われた国交相の決定についての訴訟では、県側の代理人が意見陳述した。沖縄防衛局長が行政不服審査法に基づき知事の取り消しの効力の執行停止を国交相に申し立てた経緯から「国という同一の行政主体内部で(知事の取り消しを)くつがえしておりプレーヤーとアンパイアが同一、不公正だ」などと訴えた。
翁長知事は29日夜、県議会棟で「裁判所には5回にわたる口頭弁論における審理を踏まえ、地方自治の本旨にのっとった判断を下していただきたい」とするコメントを読み上げた。和解案が引き続き協議されることについては「裁判所には双方の話し合いによる解決に格段のご尽力をいただいている」と語った。
他方、政府は裁判所が示した和解案にかかわらず、辺野古の埋め立て工事を進める姿勢を変えていない。菅義偉官房長官は29日の衆院予算委員会で、和解案について「コメントは控えたい」と述べ、仲井真弘多前知事が埋め立てを承認したことをあげて「行政判断は示されており、移設工事を進める考えに変わりない」と述べた。【鈴木一生、吉住遊、高本耕太】