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トランプ氏優勢 これでいいのか共和党

 天下分け目の「スーパーチューズデー」でも実業家のドナルド・トランプ氏は快進撃を続けた。米国の共和党が11州で実施した大統領選の候補者選び(予備選・党員集会)で、同氏は7州で勝利し、同党の大統領候補へ大きく前進した。

     トランプ氏の暴言や型破りの言動は共和党主流派のひんしゅくを買い、2月下旬にはワシントン・ポスト紙が「トランプ降ろし」を呼びかける異例の社説を掲げた。それでも同氏が勝ったのは、多くの人々が既成の政治や権威に失望し、経験のないアウトサイダーによる変革を待望しているからだろう。

     共和党自身の迷走も指摘できよう。トランプ氏を批判するのはいいとして、では共和党本来の姿、主張とは何なのか−−。

     同党は「家族の絆」を含めて米国のよき伝統と価値観を重んじてきた。だが、近年は原理主義的なキリスト教右派に加え、ブッシュ前政権をイラク戦争へ後押ししたとされるネオコン(新保守主義派)、保守系草の根運動の「ティーパーティー(茶会)」などが影響力を増している。

     キリスト教右派はテッド・クルーズ上院議員の支持基盤。ネオコンはマルコ・ルビオ上院議員への支持が厚いとされ、茶会を含む三つの勢力の台頭で、伝統的な共和党の価値観が揺れている。同党執行部などの主流派は候補一本化でトランプ氏に対抗することを検討したが、主流派とされるクリスティー・ニュージャージー州知事がトランプ氏支持に回り、本流の分裂を印象付けた。

     だが、メキシコとの国境に壁を作って移民を締め出し、イスラム教徒の入国も禁じるといったトランプ氏の主張は、欧州で強まる排外主義と相まって世界を息苦しくしている。「大きくて伝統のある党」(GOP=グランド・オールド・パーティー)を名乗る共和党はそれでいいのか。米国の保守政治にとって重大な分かれ道である。

     今回はクルーズ氏が地元テキサス州などで勝ち、ルビオ氏も初勝利を挙げた。15日以降は1位の得票者が代議員を総取りする選挙も複数の州で行われる。トランプ氏優勢とはいえ、決着がつくのはまだ先だ。

     一方、民主党は11州と米領サモアで選挙を行い、ヒラリー・クリントン前国務長官が圧勝した。バーニー・サンダース上院議員も健闘したが、クリントン氏が候補になるのは時間の問題になってきた。

     米国初の女性大統領が誕生する可能性も含めて、歴史に残る選挙戦である。トランプ氏は暴言や下品なパフォーマンスなどを慎むべきだ。選挙戦では米国の英知を感じさせる主張と論戦を聞きたい。

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