自殺率世界1位という不名誉な記録を10年以上にわたり更新し続ける韓国。自殺者増加の背景にあるのはうつ病など精神的な病に侵された人の増加だ。精神疾患に対する社会的認知の低さ、そして根強く残る「精神論」が自殺者の増加に拍車をかける。この状況を打破するため、政府は自殺と精神疾患の関連を改めて認識し、対策を発表した。 (康敬瓚)
政府は政策発表
医療費の審査機関である健康保険審査評価院は2月23日、うつ病の患者数が昨年初めて60万人を超えたことを明らかにした。
うつ病患者の増加の背景には、長期化する不景気や、職場や家庭で複雑化する人間関係など多岐にわたる。しかし、うつ病患者の増加は韓国に限った話ではない。WHO(世界保健機関)は、うつ病が2020年には「健康生活に支障をきたす原因」の2位になると予想し、各国へ対策強化を呼びかけている。
韓国でうつ病患者の増加が社会的課題と認識されている原因は増加する自殺者との関連だ。韓国はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で自殺率1位で、自殺者の10人に9人はうつ病などを患っていたとみられている。しかし患者の多くは投薬をはじめとする適切な治療をほとんど受けていないという。
人口1000人あたりの抗うつ剤の平均1日服用量(DDD)は、20DDDで、OECD平均の58DDDの半分にも満たない水準となっている。OECD加盟国28国のうち2番目に低い。
背景には、うつ病に対する社会的認知度の低さが指摘されている。患者が病院や周りの人に自分の状態を告白できず一人で抱え込み、自殺を選択するケースも後を絶たない。うつ病は気持ちで乗り越えられるといった「精神論」が広く浸透していることも、うつ病患者が名乗り出られない背景にあると見られている。
多くの専門家は、社会全体でうつ病に関する正しい知識を身につけ、患者に対する偏見をなくすことが重要であると述べている。そうしてこそ患者は自分の状態を病院や周りの人に伝え、早期の発見・治療につながるというのだ。
政府は2月25日、「精神健康総合対策」を発表した。うつ病などをはじめとする精神疾患の診察サービスを受けることのできる病院を拡大し、サービス利用への敷居を下げるというものだ。また同時に、精神疾患患者に対する社会的偏見をなくすためのキャンペーンも行っていく。
政府は対策の意義について「憂鬱や不安、中毒など、私たちの社会の精神的健康の問題が持続的に増加することにともない自殺、犯罪も増加し、社会的負担も増える。政府は国民の精神衛生上の問題の予防と早期管理に重点を置く」としている。一部では「遅すぎる対応」との声もあるが、期待する声は少なくない。 |