就活スタート 将来を熟慮して選択を
毎日新聞
来年春の入社に向けた会社説明会が1日に解禁され、現在大学3年生の就職活動が本格的に始まった。人手不足で学生優位の「売り手市場」と言われ、さらに説明会から採用面接までの期間が昨年より2カ月短縮されたため、企業側の人材確保への動きも激しくなってきている。
例年、学生たちは説明会の解禁日に一斉にエントリーシート(応募用紙)を提出するが、最近は1人平均50社に応募するといわれ、書類作成や説明会の参加に忙殺される人が多い。今年は一段と短期決戦になったため、じっくり企業を見極める余裕がなくなっているのが現状だ。
企業も対応に追われている。就活の指針を作った経団連に加盟していないIT関連や外資系企業はすでに採用活動を始めており、加盟企業も解禁前から就労体験のインターンを募集するなどして、優秀な学生の採用につなげようと躍起だ。経団連の昨年の調査では面接の解禁が「守られていない」と回答した企業が9割近くに上っている。
一方、就職しても「仕事が合わない」などの理由で早期に辞める人は多い。厚生労働省の調査では大学を卒業後3年以内に離職する人が最近は30%を超える。3人に1人が会社に定着できていないことになる。
学生と企業のミスマッチをなくすため、政府は昨年「青少年雇用促進法」を制定し、3月から就活学生への情報開示制度を始めた。学生が書面や電子メールで企業に問い合わせると、(1)離職率や平均勤続年数(2)月平均の残業時間や有給休暇・育児休暇の取得状況(3)研修制度−−などに関する情報を企業は公開しなければならない。応じない場合はハローワークなどが指導や勧告を行う。
ただ、3項目それぞれの一部を提供すればいいため、不都合な情報が開示されない可能性はある。学生の信頼を得るために企業は積極的な情報開示に努めるべきだ。就職した人がすぐに離職したのでは企業にとっても損失ではないか。
現在は多くの学生がネット上の就活サイトを通じて企業情報を得ているが、企業からの掲載料で運営しているサイトではマイナス情報を得ることは難しい。一方、大学の就職部には情報が集積し、学生の特性や希望に沿ってきめ細かく相談に応じているところもある。大学やハローワークは学生に対してもっと有効な情報提供に努めるべきだ。
「自分のやりたいことができる会社」「社風が良い会社」が学生の企業を選ぶ条件の上位という。自分が本当にやりたい仕事は何なのか、それにふさわしい企業はどこなのかをよく考え、地に足の着いた就活をしてほしい。