誰かのふとした行動が、たまに世界を救ったりする
伊坂ワールド全開の中編4作。
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「動物園のエンジン」は、不思議な動物園の職員の行動が、実は殺人事件に関係しているのではと、無関係な登場人物たちが探偵ごっこをする。
「サクリファイス」では、山奥の村の不思議なしきたりに出会い、裏側に隠された真実を探す。
「フィッシュストーリー」は、時間軸が異なる4つの場面が展開され、次第にその繋がりが明らかになる。
売れないバンドのレコードにある無音部分が、巡り巡って世界を救う。
繋がりが繋がりを呼ぶ、伊坂ワールド。
「ポテチ」は、空き巣が主人公だが、行動が不思議。
はじめから違和感を持って読み進めると、次第に明らかになる野球選手との繋がり。
最後にはヒーロー登場という爽快な、それでいて愛情が伝わる物語。
ちょっとだけでも報われたい
「お金よりもね、何かこう人生のうちで一度くらい、やったね、とか言ってやりたいじゃないですか」
旦那さんに向けた奥さんのセリフ。
細々と地道に生きてきた旦那さんに、何か一度くらいいいことがあってほしいとの願いをこめて。
やっぱり、何か報われたいよね。
それはお金以外のところで、何かやりたいことを頑張りたい。
それが、幸せというものだろう。
権力の怖さ、恐ろしさ
「最初は何か、綺麗事ば言ってさ、みんなを巻き込んでいくわけさ」
伊坂幸太郎の作品で多くある巨大な権力に押しつぶされそうになる個人という構図。
最初は小さな違和感だけだが、徐々に方向をかえ、気づいた時には取り返しがつかない。
そういった巨大なものの恐ろしさ。
いまの日本も転換点なのだろう。
飲まれないように、しっかり判断しなければならない。
若者だからこそ。
ハッピーエンド過ぎないハッピーエンド
「たかだかホームランで、人は救われるのか?」
斜に構えた、それでいて現実感のあるセリフ。
だけども、ご都合主義のように、救われることだってあるのだ。
伊坂幸太郎の作品は、ハッピーエンド過ぎないハッピーエンドが素敵。
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