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景気とIT投資の潮目の変化に注目 「残予算」では見えないデジタルシフト
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
「久しぶりに、あの言葉を聞いたよ」。大手ITベンダーの営業幹部がそう話していた。あの言葉とは「残予算」である。年度の予算のうち使い切れずに残るお金のことで、いくつかのユーザー企業のIT部門から、残予算の使い道に対して提案依頼があるそうだ。
本来なら残予算は、必要が無かったのだから使わないのが筋だが、IT部門は来期の予算取りに響くことを懸念して、使ってしまおうとする。景気低迷による投資抑制、IT予算の削減が長く続いたため、つい最近までこの残予算は死語と化していた。だが景気の回復に伴い、IT予算が積み増されたのか、「予算が消化しきれない」という思わぬ事態が生じたわけだ。
このまま行けば、ITベンダーにとってハッピーだったかもしれないが、そうは問屋が卸さない。中国の景気減速や石油・資源の価格下落で世界経済が変調し、その影響が日本経済に及ぶと懸念されるようになった。別のITベンダーの幹部は「昨年末まではどの顧客も、IT投資を積極的に行う、と話していたのに、今年に入った途端に雰囲気ががらりと変わった。景気が心配で様子見と言い出した」と話す。
ITベンダーはこのところ、システム開発の受注残を積み上げ絶好調だが、ユーザー企業のIT投資動向への減速懸念の声が広がりつつある。例えばNTTデータは、2016年3月期第3四半期決算の発表の場で、「金融や製造業などがIT投資に慎重」と指摘している。特に金融機関は、日本銀行のマイナス金利導入の影響もあり、収益悪化が懸念されており、新規の大型投資に慎重になり始めているようだ。
つまりユーザー企業は、はたして今が「余っている予算があるならば使ってしまえ」と言える状況なのか、にわかに判断が難しい事態に立ち至っているのだ。予定していたシステム開発を先送りにするユーザー企業はまだ出てきていないが、景気の先が読めないとして、多くの企業が投資に様子見を決め込めば、それだけで景気が冷える。だから多くのITベンダーが景気の潮目の変化を心配し始めているわけだ。
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