労働市場では、失業率低下&就業者増加トレンドが持続しています。
しかし、労働市場の改善は賃金の力強い上昇につながっていません。
そこで、2012年から2015年にかけての労働市場改善の中身を確認します。
産業別では、就業者の増加は医療・介護が突出しています。*1
第一の矢(金融緩和→円安)と第二の矢(財政政策)の直接的な効果が期待される製造業と建設業ですが、就業者数は横ばいのままです。*2
性別では女に集中しています。男では65~69歳の増加が目立ちますが、これは団塊の世代(1947~49年生まれ)がこの年齢に達したことの反映と見られます。
就業率の変化を見ると、女は幅広い年齢階層で、男は60代の上昇が目立ちます。
男では、団塊の世代の「退職→非正規で就労」のボリュームの大きさが目立ちます。
脇田成の分析からは、就労者増加の中心が女&高齢者であることが賃金上昇圧力を弱めていることが推察されます。
- 作者: 脇田成
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①まず主婦パートは主婦であることから持ち家のある地域から離れられず
②「パート収入103万円の壁」が所得税や社会保障面の制度にあること
の2点が企業の買い手独占状況による低賃金状況を支えています(本田(2010)は買い手独占を企業側の「つけこみ」と表現しています)。
高齢者には在職老齢年金制度があり、支給開始年齢に達したあとも就労して給与所得を得ている場合に、年金の一部または全額をカットする制度があります。[…]
この制度も結果的に高齢者の低賃金就労を促進しています。
さらに、外国人雇用も増加中です。
アベノミクスの成果とされる「就業者増加」は、主に「安く雇える非労働力を労働力化した」ことだったと言えそうです。これが「経済的余裕がなくなったために働かざるを得なくなった人々」の増加の反映だとすれば、正というより負の「成果」になってしまいますがどうでしょうか。*3
女性や高齢者の皆さんにももっと活躍してもらえるよう、多様な働き方改革も進めていきたいと思う。
↑ 「活躍」「多様な働き方」が真に意味するところが気になります。
- 作者: 本田一成
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