2016.03.02 18:00
世界的に著名なゲームデザイナー水口哲也氏が特任教授を務める慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(以下:KMD)日吉キャンパスで開催されたイベント『-偶然の出会い-「没入する身体〜Rez Infinite Synesthesia Suiteが生み出す新たなゲーム体験」』。2015年12月に米国サンフランシスコで開催された PlayStation Experience 2015にて披露された、PlayStation VR『Rez Infinite』にて水口氏が着用していたSynesthesia Suit(シナスタジア・スーツ)はなぜ生まれたのか?発想のルーツを掘り下げたトークセッションの模様をお届けします。
『Rez Infinite』 Synesthesia Suit(シナスタジア・スーツ)と水口氏
モデレーターを務めるKMD稲蔭正彦教授がセッション冒頭に「ステージ上のスーツが主役!」と述べるのにふさわしく、来場者の多くがスーツの撮影を行っていた。
ワシリー・カンディンスキーの「Moscow (モスクワ)」
"「Quantization(クオンタイゼーション:同期)」 。リズムにシンクロすると人間は気持ちいい。バラバラだったものが同期すると、人間は気持ちいい。ならば不確実なリズム入力を気持ち良いリズム拍に強制的にしたらどうなるか?"
水口氏とSynesthesia Suit(シナスタジア・スーツ)
『Rez Infinite』シナスタジア・スーツのソースコードを開いて触感と光が連動する様をデモ。水口氏「ギターには熱さがある。赤に近いオレンジだ。」 氏の考える音と光、色の同期を再現。
シナスタジア・スーツの実現化はライゾマティクスが協力している。
シナスタジア・スーツは真夏に開発。スーツの実験は体力勝負だったと水口氏は述べる。
『Rez Infinite』シナスタジア・スーツの内部
シナスタジアスーツを着用し『Rez Infinite』ゲームをプレイした稲蔭教授(左)。 「この体験を、どのように伝えればいいかわからない。」と率直なコメントを述べられる。
恐怖心と依存性が混じる体感をもたらすシナスタジア・スーツを着用する筆者
私もイベント終了後に特別に体験させていただきました。ヘッドマウントディスプレイVR経由の視覚による3D空間浮遊感と、体全体を覆う触感センサー、ヘッドフォン経由のグルーブ感あるサウンド。視覚・聴覚・触覚すべてをハックされてプレイするゲーム『Rez Infinite』は始めて車の運転をした時のような恐怖心と「Call & Response」によるグルーブ感・高揚感が混ざり合った、いままで体験したことのない複雑な感情に見舞われました。
「怖いけど居心地が良いのでこの空間に居続けたい」という感覚はなかなか体験できないものです。人間の進化はルーチンの中にあるのではなく新しい体験、体感を学ぶことにより加速すると感じております。2016年3月21日まで Media Ambition Tokyo 2016作品として六本木ヒルズにて体感できるので、もしも自分の中のまだ体感せぬ感覚を刺激させたい方は、是非体感いただきたいと思います。
水口氏はゲームデザイナーでありつつ、人間の「気持ち良い」新たな感情をデザインしています。南澤准教授やライゾマティクスと組んで体現された新たな「エモーショナルな触感デザイン」、このデザインにどのような表現を付与すればいいか?文字でうまく表現できない自分を、歯がゆく感じます。今後「体験そのものを伝えるメディア」が到来する時代に、どのような表現で伝えていけばいいのか?メディアを運営する者として考えさせられるイベントでした。
南澤准教授(左)とシナスタジア・スーツを挟んで水口哲也氏(右)
SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/