2014年1月に亡くなったタレント・やしきたかじんさん(享年64)の長女が、たかじんさんの闘病生活を取り上げた作家・百田尚樹氏の著書「殉愛」により名誉を傷つけられたとして、発行元の幻冬舎に出版差し止めなどを請求した訴訟の弁論が2日、東京地裁で開かれ、百田氏が証人として出廷した。原告側代理人の質問に「さっきから全然うその質問して。何それ?!」と声を荒らげるなど、百田氏が感情的になる場面もあった。
証人質問は主に、百田氏の取材が十分であったか、正当なものか、という点について原告側、被告側、裁判長から行われた。
スーツ姿で姿を見せた百田氏。最初に被告側代理人から質問されたが、冒頭で、裁判所側から「少しゆっくりしゃべっていただいて…」と要求された。「これでもゆっくりしゃべってるんですけどねえ」とぼやいた後で、たかじんさんと妻のさくらさんが2人きりで生活していたことへの関心から執筆したことを延々と語ったが、再び裁判所から「一問一答で質問していただきたい」と“大演説”が始まることをけん制された。
原告側代理人がある週刊誌記事を証拠として示し、「ゲラを事前にチェックしたのではないか」と指摘すると「ありません」と即答。いらだちを隠せない百田氏は「さっきから全然うその質問して。何それ?!」と叫んだ。たかじんさんから依頼されたわけでもないのに、「殉愛」の書籍に巻かれた帯に「故人の遺志を継いで」とあることを問いただされると「映画の宣伝など帯は多少あおるものではないですか」と“百田節”で反論した。
百田氏はたかじんさんの長女の取材をせず、「殉愛」でたかじんさんと長女との確執に触れたことは認めたが、確執そのものが「(本の)テーマではない」「晩年の孤独がテーマ」と強調。長女を取材しなかった理由として「たかじんさんが闘病していた2年間、見舞いに来なかった」「本当のことを言うのだろうかという思いがあった」ことなどを理由に挙げた。ただ、途中で「取材しなかった理由を言いましょうか」と息巻く百田氏を何度も原告側代理人が「いいです」「あなたの意見陳述の場じゃない」などと制止することが多々あった。
「膨大なメモ、資料、関係者からも(たかじんさんとさくらさんが)どういう関係だったか聞いている」と執筆内容の情報源となっているさくらさんの証言が信用できると百田氏は主張した。また、さくらさんについて「遺産を盗むため(の結婚)だとネットの声もありますが、笑止と言わざるを得ません」と法廷で持論を展開した。
約2時間の予定に合わせるため、裁判長が「時間がもう半分ですけど」と被告側代理人にスムーズな進行を求める一幕も。結果として、2時間4分でほぼ予定通りに終了した。
読み込み中…