高校生時代の時、僕はあいかわらず女の子と会話ができない状態が続いていた。
そんな中、友達が僕に貸してくれた物があった。
エロゲーだ。
90年代初頭、僕はNECのPC−9800シリーズのパソコンを持っていた。
僕の友達はなぜかエロゲーをたくさん所有していて、
パソコンを持っている僕に数々のエロゲーを貸してくれた。
僕はエロゲーにはまった、
その圧倒的なエロさと面白さに参ってしまった。
・鬼畜戦士ランスが活躍するRPG、『ランスシリーズ』。
・考古学者が秘宝を求めて謎解きを進めるアドベンチャーゲーム、『DE・JA』(でじゃ)。
・脱衣麻雀の名作である、『雀JAKA雀』(じゃんじゃかじゃん)。
など、様々な名作があった。
なかでも僕が最も熱中したのが、
恋愛シュミレーションゲームの草分け的な名作『同級生』だ。
このゲームは主人公の男子高校生が夏休みの間に、
同級生の女の子たちと恋愛をしていくゲームで、
恋愛がうまくいくと、エロいCGが見られるのだ。
けっこう難しくて、会話の選択を間違えてしまうと、なかなかうまくいかない。
でもそこはゲーム、やり直しは何度でもできる。
現実世界では、女の子と一言も口が聞けなかったが、
ゲームのなかでは人気者のプレイボーイとして、
複数の女の子キャラと恋愛を楽しんだ。
パソコンの前に座っているだけで、いとも簡単に願望を満たしてくれる。
僕は目をギラつかせ、生唾を飲み込み、股間を熱くさせながらゲームを攻略していた。
それでも学校にいくとやっぱり、クラスの女の子を意識してしまう。
僕が現実世界の女の子と会話ができなかった理由の一つが、
女は自分の思い通りにならない、ということを薄々知っていた事だった。
男が初めて出会う異性は母親だ、
母親は、子育てのなかで感情的に怒ったり、泣いたり、悲しんだりするし、
また時にやさしく褒めたり、抱きしめたりする、
そして世の中には完璧な人がいないように、理想の母親もいない。
自分がこうして欲しいという願望を必ずしも満たしてくれない、
あれはダメ、これはダメ、と自分の考えを否定され、
逆にこれをやりなさい、あれをやりなさい、
と母親の願望を押し付けられることになる。
このような母親の姿が、女の原型として無意識に組み込まれる。
そんな女の原型があるから、現実の女の子に対して、
僕の意見を素直に聞いてくれない、僕の意見を否定されてしまうかもしれない、
と無意識レベルで感じ、会話をする事ができなかったのだ。
だから僕はエロゲーにはまりこんだ、
ゲームのなかの女の子は自分の思い通りになるからだ。
めくるめく二次元美少女との戯れ、
それは恋愛の修行者が、誘惑に負けて迷い込んでしまう魔境である。
こうして僕はオタッキーと呼ばれることになった。