スーパーチューズデー 4州3勝の2氏に勢い
【ワシントン西田進一郎】米大統領選の民主、共和両党の候補指名争いで、多くの州で予備選・党員集会が行われる序盤の天王山「スーパーチューズデー」の投票が1日午前(日本時間1日夜)、東海岸のバージニア州などから始まった。序盤4州で3勝を挙げた民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)と共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)が多くの州で勝利する勢い。1日深夜(同2日昼)ごろにはほとんどの州で大勢が判明する見通しだ。
民主党は11州と米領サモア、共和党は11州で予備選・党員集会を開く。民主党では、クリントン氏がジョージア州やアーカンソー州など南部を中心に優位な戦いをしている。
バーニー・サンダース上院議員(74)が明確に優位に立っているのは地元の北東部バーモント州のみ。隣接するマサチューセッツ州も接戦だ。サンダース氏がバーモント州以外で勝利を挙げられなければ、クリントン氏が指名獲得に向けて大きく前進する。
一方、共和党では、CNNテレビが2月29日に発表した世論調査でトランプ氏の支持率は過去最高の49%に達し、他の4候補の合計を上回った。スーパーチューズデーの事前世論調査では7州でリード。結果を受けて指名獲得が現実味を帯びてくる可能性がある。
これに対し、保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45)は割り当て代議員数が最多の地元テキサス州の死守を図る。また、中西部ミネソタや南部アーカンソー州などは接戦とみられ、マルコ・ルビオ上院議員(44)が初勝利を目指す。
共和党は15日から、比例配分ではなく1位の候補が州に割り当てられた全代議員を獲得する「勝者総取り」を採用する州が出てくる。クルーズ氏やルビオ氏が15日以降に逆転の望みをつなごうとするなら、スーパーチューズデーで複数の州で勝ち、獲得代議員数の差でトランプ氏に食らいつく必要がある。
共和、序盤は比例配分
【ワシントン及川正也】指名争いは、予備選・党員集会が開かれる州の勝敗ではなく、州ごとに得票数に応じて与えられる代議員の争奪戦だ。序盤4州の戦いを終え、ともに3勝した共和党のトランプ氏、民主党のクリントン氏が優勢だ。
両党とも代議員総数の過半数を獲得した段階で指名が確定する。比例配分や勝者総取りなど代議員の配分方式は各党や、同じ党の中でも州ごとに異なるが、勝敗ラインは共和党が1237人、民主党が2383人だ。
共和党は初戦アイオワ州を逃したものの、3連勝中のトランプ氏が82人を獲得し、2位のクルーズ氏17人、3位のルビオ氏16人を大きくリードしている。3月1日のスーパーチューズデーでも各種世論調査では優勢だ。
勝者総取りだった共和党は前回12年から序盤戦を比例配分とした。序盤で勝者総取りはサウスカロライナ州だけでスーパーチューズデーも比例配分だ。
主要3候補は最大のヤマ場は、ともに本選では勝敗の行方を握る激戦州のオハイオ州やフロリダ州で予備選が行われる3月15日以降とみている。同日の予備選からは勝者総取り方式へ移行するため代議員数の伸びが激変する。勝利を決めたいトランプ氏に対し、フロリダ州が地元のルビオ氏は「7月の党大会までに過半数を得る候補はいない」と読み、長期戦に備える構えだ。
宗教右派などトランプ氏と支持基盤が重なるクルーズ氏は自身が撤退しても票はトランプ氏に流れ、ルビオ氏に勝ち目はないとして「ルビオ降ろし」をもくろむ。党内では現職のフォード大統領にレーガン氏が党大会まで挑んだ1976年以来の長期戦を予想する指摘もある。
民主党は州ごとの配分ではクリントン氏が91人で、65人のサンダース氏をリードしている。民主党はすべて比例配分。特徴は州の結果に関係なく個人の意思で投票先を決められる議員や知事らスーパー代議員の存在だ。
クリントン氏は予備選・党員集会での獲得代議員数に加え、こうした「政治家票」を453人集めており、20人のサンダース氏を突き放している。これを加えた総計はクリントン氏544人、サンダース氏85人だ。
ただ、クリントン氏は08年予備選で、当初はスーパー代議員獲得数でオバマ氏を圧倒したものの、スーパー代議員は支持者を変更することもできるため、後に逆転され煮え湯を飲まされた経験がある。オバマ氏が増勢するにつれ、黒人の連邦議員などを中心にクリントン氏支持からオバマ氏支持に転換する動きが拡大したからだ。クリントン氏はその教訓を踏まえ、長期化覚悟で予備選で着実に勝利を続ける戦略だ。