IT部門の役割は事業部門に寄り添うこと--IoTベンダー座談会(3)

山田竜司 (編集部) 吉澤亨史 怒賀新也 (編集部) 2016年03月02日 07時00分

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 IoTに取り組もうとする企業が増えている。その取り組みは、従来の事業にIoTの要素を加えたものから、まったく新しい事業を生み出そうというものまでさまざまだ。いずれにしても、IoTを事業に生かすためには技術的、組織的、経営的な課題が多くあるのが現状だ。IoTに関わるベンダー6社が集まり、座談会を開催した。今回は3回目。(第1回第2回

目的意識がはっきりしている企業はIoTを上手に活用する

――ここからデータの収集と活用という課題に移ります。顧客のリアルな反応は分かりましたが、IoTビジネスの先進企業は何が違うのでしょうか。

古田氏 目的意識だと思います。藤城さんがおっしゃったことが、今一番の問題だと思っています。顧客の中で組織がどうあるかが重要で、われわれが一番手をこまねいているのが、ITを入れることによって顧客のコストに対する利益がどれだけ上がるかわからないことによる機会損失があるという話がありましたが、そういうことはやってみないと出てこないファクトです。


NTTデータ 第一公共事業本部e-コミュニティ事業部企画統括部 企画統括部長 古田正雄氏
事業部の新規ビジネス分野を統括し、事業部で保持しているセンサ・M2Mのノウハウを活かし、公共および民間分野のIoTビジネス拡大に注力

 最近の製品は、わざわざセンサをつけなくてもよくなっている場合もあります。うちの機械は壊れませんという顧客もいます。ですから、そこに対する価値がなかなか納得されない。でも、先ほどのもうひとつの軸であるサービス部門の価値は見えやすいということですから、まずわれわれはそこから攻めていくべきなのでしょう。顧客の中でその価値が見いだされれば、「なるほど」と他の部門へと広がっていくのではないかなと思っています。

 みなさんも同じような苦労をされていると思いますが、現場はなかなか一筋縄ではいかない。われわれシステムを作る側からしても、そういうモニタリングシステムを入れることにも抵抗されます。

村澤氏 何をやるのかという目的感がはっきりしているというのはすごく大事なことで、それは現場や中間でマネジメントも経営者も同様だと思います。IoTというのは事業活動そのものにデジタル技術を組み込んで、回せるモデルにしていきましょうという、大きなトランスフォーメーションだと思います。その強みをどう自分たちの事業に組み込んでいくのかという命題として捉え直してもらえると、経営者の方から見たときの問題がはっきりしてくると思います。


シスコシステムズ合同会社 IoEイノベーションセンター シニアマネージャー 今井俊宏氏
2014年11月、東京にシスコIoEイノベーションセンターを開設、現在、IoT/IoEの普及促進に向けたソリューション開発に従事

 事例について聞かれることがあります。そういうときには、「経営者のみなさんが今問われているのは、新しいデジタルを十分に組み込んだ事業の運営のやり方、活動のあり方です。昔は『ヒト、モノ、カネ』で経営していた三角形が、これからはそれに『データ、人工知能、ロボット』を加えて六角形になります。この6要素でこれからの事業活動を展開する場合、足下の仕事の回し方、管理のあり方、人の配置も変わり、事業の活動とその生産性が従業員の活動と必ずしも紐付かない時代になります。成長のためにデジタルをどう取り扱っていくのですか」ということを質問するのです。

 そうすると皆さん考え込みますが、それは結局企業全体で見たときに何を願って取り組むのかという、経営者側から見た問題意識を問う試金石だと思うのです。そこから問題を深く掘り下げていくと「当初認識してた世界とちょっと違う世界だな」「いやいや、であればここまで組み込んでやるべきだな」など事業会社によって異なりますが、問題意識はよりはっきりするでしょう。そういう活動がわれわれにも必要なのではないのかと感じます。

今井氏 IoTは、日本企業にとってはチャレンジなのかなと思います。海外の会社にはセクションの横の連携を担う部署があって、そこが基本的な旗振りをします。そこでたとえば自動車メーカーならカスタマーエクスペリエンスをどうするのかということをトップダウンで決めることもある。そういう文脈でコネクテッドカーなどIoTを主軸に置いたクルマを開発しようと言えるわけです。

 だから、IoTの導入でも「なんのためにやるのか」がはっきりしています。一方、日本企業では「個別最適化主義」がまだ主流で、未だに「いかに良い物を安くつくるか」というところで足踏みをしている状態です。欧米のようなカスタマーエクスペリエンスの方向にはなかなかハンドルが切れない。日本ではそういう会社がまだまだ多いように思います。

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