先月26日に再稼働したばかりの関西電力高浜原発4号機(福井県)が、発電と送電を始めた直後に自動で緊急停止した。

 関電によると、変圧器の周辺で異常が起きたという。

 関電は3月下旬の営業運転をめざしていたが、原因究明を優先させるべきだ。その上で再発防止策を作り、地元自治体に丁寧に説明する責任がある。原因次第では営業運転に入った3号機など他の原発で同じことが起きる可能性がないか、改めて精査することも必要だろう。

 関電の原発で原子炉が自動停止したのは、08年11月に美浜1、2号機が送電線への落雷の影響で停止して以来だ。

 放射能漏れはなく、核分裂反応も抑えられていることから、事故を防ぐ制御システムが想定通りに働いたともいえる。

 高浜4号機をめぐっては、2月20日に原子炉補助建屋で放射性物質を含む水漏れがみつかった。ボルトの緩みが原因だった。関電は他のボルトも点検し再発防止策をとったとして、起動試験を予定より1日ずらして稼働作業に入っていた。

 原子炉の安全性に直接かかわるトラブルではないとしても、東京電力福島第一原発事故以降、社会は原発の安全により厳しく、敏感になっている。

 滋賀県の三日月大造知事が「これで安全で安定的な電源といえるのか」と疑問を呈したのは、住民感覚として当然だ。

 稼働前、関電の八木誠社長は「緊張感を持って安全第一に作業を進めたい」と語っていた。ならば安全システムが正常に作動したからといって、すぐには安心につながる状況ではないことを、肝に銘じてほしい。

 東日本大震災から間もなく5年。長期的には脱原発をめざすべきだが、事故時の対応や、安全性の確保が担保されていれば、必要最小限の再稼働まで否定はしない。だが、課題を先送りしたまま再稼働をなし崩しに進めるのには反対だ。

 高浜原発は避難計画の策定が義務づけられた半径30キロ圏に福井、京都、滋賀の3府県が含まれ、約18万人が暮らす。避難計画の実効性は十分ではなく、若狭湾周辺に原発が集中立地するリスクも未解決なままだ。

 それでも関電は再稼働が不可欠だとして踏み切った。社会の不安をくみ取る責務はいっそう重いことを自覚してほしい。

 原子力規制委員会が新規制基準に照らして「合格」とした原発でも、安全は事業者の運営次第だ。自治体や住民が安全管理に関する情報開示を求め、目を光らせていく必要がある。