「了解しました」は無礼か、というトピックがちらちら目についていて思い出しました。
インターネットの電子メールが商用に使えなかった JUNET の昔から、電子メールの返信に「了解」とか「了解しました」とか書く風習があったように記憶しています。
「了解」という、まあ日常会話とかお手紙ではあまり使わない固いコトバが電子メールで局所的に使われるようになった原因は、たぶんこれだと思うのです。
私が子供の頃の1960年代、テレビの中で「了解」というコトバがかっこよく使われるシーンがよくありまして、それは無線で交信するとき。
特撮ものに出てくる「隊員」とか、刑事物のデカさんとかがトランシーバーに向かって「了解!」って言う。
無線でお話ができるトランシーバーは先端のテクノロジーで、子供心にあこがれたもんです。「了解」っていうコトバをこのとき覚えた。
で、憧れが昂じてアマチュア無線の免許を取ることになって、無線法規の国家試験の勉強をしていて知ったのですが、この「了解」っていうコトバは実は電波法に基づいて決められたものなんです。
無線局運用規則第十四条に
第十四条 無線電話による通信(以下「無線電話通信」という。)の業務用語には、別表第四号に定める略語を使用するものとする。
とあって、その別表第四号には
略語 意義又は左欄の略語に相当する無線電信通信の略符号 (中略) こちらは DE どうぞ K 了解又はOK R又はRRR お待ち下さい。 AS 反復 RPT ただいま試験中 EX 本日は晴天なり VVV (後略)
とある。
無線電話(声で通信する無線)では、相手方からの通信を受けたら「了解」と返事して、用件を話して相手にマイクを渡すときには「どうぞ」と言わなければならない決まり。プロの無線のオペレーターさんは法規に従ってこう通信していたので、それを聞いた放送作家さんがプロっぽく取り入れたんでしょうね。
ちなみに、電信(モールス符号を使った通信)では「了解」に相当する略語はR。モールス符号では「・—・」。Roger(ラジャー)の頭文字です。
兵隊モノなんかで上官の指示に “Roger” って答えるのは、無線通信用語に由来してます。
それから、マイクのテストなんかに使う「本日は晴天なり」もこの法令で決められた略語。試験的に電波を出すときはこう言わなければいけないことになってる。
ま、そんなわけで、アマチュア無線をやっている人たちは日常会話でも平気で「了解しました」なんていう変な日本語を使って会話するものだから、街の中なんかでもすぐ浮いて、わかっちゃったもんです。
時は流れて、コンピューターを使って通信をする電子メールとか Usenet とかパソコン通信とかが現れたとき、当時のコンピュータ使いに多かった無線クラスタの連中が、いつものように「了解しました」なんて書き始めたのが事の起こりなんじゃなかろうか。つまり、返信するときに「了解」と書くのは元はと言えば電波法でそう定められちゃったからだ、と思っているのですがどうでしょう?
(ウラはまったく取っておりません。あしからず。)