【ソウル=名村隆寛】韓国で今年、改訂される小学6年生用の社会科教科書(国定版)に「慰安婦」や「性奴隷」の表現や慰安婦の写真の掲載が見送られたことが29日までに、分かった。韓国教育省では「小学生には適切ではない」ことを不採用の理由に挙げている。
教育省は2014年に改訂の準備版を作成し、その中には「戦場の日本軍慰安婦」という表題と写真に加え、「戦場に強制的に連行され、日本軍の性奴隷になった」との説明があった。最終的な改訂版では写真を削除。記述も「強制的に戦場に連行された若い女性たちは日本軍から多くの苦痛を受けた」に変わった。
準備版の教科書を試験的に使い、現場(教師ら)の意見を聞いた結果、同省の審議会では表現を和らげるとの結論に至った。改訂版教科書は、新学期が始まる3月から授業で使われる。
教育省の方針変更の背景には、昨年末の慰安婦問題をめぐる日韓合意への考慮、対日批判を抑制する意図がうかがえる。左派系メディアは「韓日合意の影響としかいえない。屈辱的な合意によって、正しい歴史認識と教育までもが反対方向に向かっている。教科書の内容まで変える必要はない」(ハンギョレ紙)などと批判している。
「小学校教育には不適切」と常識的な判断をした韓国政府だが、「強制と日本軍からの苦痛」との表現は教科書に残した。
一方、韓国の教育省と女性家族省は昨年、小学校高学年(5、6年生)と中高生を対象に作成した慰安婦問題の副教材で「慰安婦」の表現を使っている。副教材を用いた試験的な授業も行っており、今年から全国で授業を行う予定だ。「慰安婦」の表記がある副教材での授業を、小学校でも予定通り行うのかどうかが注目される。(産経新聞)