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【震災5年 3・11】
福島の土壌に雲母が多いことが幸いした…セシウム吸着効果で農林水産物汚染は着実に減少
だが汚染は着実に減っている。野菜・果実は13年度以降、基準値超えはなく、全袋を検査している玄米も15年産の基準値超えはゼロだ。東京大の田野井慶太朗准教授(放射線植物生理学)は「福島の土壌は雲母に由来する粘土質が多いことが幸いした」と解説する。
原発から放出されたセシウムは約3カ月で地表から深さ6センチ程度にまで浸透。セシウムは水に溶けるとプラスの電気を帯びるが、雲母由来の粘土の粒子はマイナスの電気を帯びているため、セシウムを引き寄せて吸着する。
粘土の粒子は層状で、時間が経過すると互いにくっつき合い、セシウムを層の間にがっちりと挟み込む。こうなると、セシウムが植物に取り込まれることはない。
また、畑や水田で大量に使用されるカリウム肥料も貢献した。土壌中にカリウムとセシウムがあると、カリウムは植物の根に先に入り込み、セシウムの吸収を阻害する。植物はカリウムを十分に取り込んだ状態になると、セシウムを吸収しなくなる。