「大根おろしに医者いらず」というキーワードが、「Yahoo!検索データ、デイリーランキングー急上昇ワード」(1日)において、終日上位に君臨しています。食べ物に関する問題を、『グッド!モーニング』(テレビ朝日)で出題。「大根おろしに医者いらず」とする効用に関心を持った多くのネットユーザーが、さっそくYahoo!で検索したらしいのです。
先日も、「黒バナナ健康法」をご紹介したばかりですが、
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『1日1本で医者いらずになる 黒バナナ健康法』シュガースポット
今回は、大根おろしです。
何を食べると健康になる、という情報に対して、消費者はなんて敏感なんでしょうねえ。
昨日、2月末の梅田の事故で、実は運転手が大動脈解離を発症したという報道から、「福島のコメを食べていたからだ」などというトンデモツイートに熱中していた、自称「脱原発」の人が注目されていましたね。
科学教育に背き、「反原発」の潮流に誤解を与えかねないツイートは、それ自体迷惑であり論外です。
そして、「コメ」という食材を、病気や事故と一直線に結びつける短絡的な発想は、国民全体に蔓延しているフードファディズムとして捉える必要があるのではないかと私は思いました。
さて、「大根おろしに医者いらず」です。
理由としてあげられているのは、
1.殺菌力がある(食中毒防止)
2.消化酵素(アミラーゼ)が含まれていて食欲増進作用がある
3.ビタミンや食物繊維が豊富に含まれている(美肌、免疫力効果)
そして4つめが、クイズでもよく出題される、
制癌作用です。
居酒屋で魚料理を、大衆食堂で魚関連の定食を頼むと、必ずと言っていいほど、「大根おろし」がお皿の片隅についてきます。
これは、商売繁盛を願う盛り塩とは違い、縁起ではなく合理的根拠がある、という話です。
焼き魚には、間違いなく焦げがあります。
焦げは、ベンゾピレン(benzopyrene)といって、アミノ酸が変化した、遺伝子と結合する発がん性物質が含まれています。
だいこんおろしに含まれる、辛味成分(イソチオシアネート)や消化酵素(ペルオキシターゼ)などは、焦げのベンツピレンを体外に排出してくれるので、焼き魚には大根おろしがいい、というわけです。
焼き魚だけでなく、焼き肉、ハンバーグなどにも、焦げはつきもの。
ハム、ソーセージのような肉の燻製、燻煙食品からもベンゾピレンが検出されます。
カツオの切り身をいぶす製造過程で、ベンゾピレンが発生するかつお節は、毒物扱いで「ミラノ博覧会」に持ち込めないとニュースになりましたね。
ですから、理屈としては間違っていないのでしょう。
しかし、焼き魚の焦げはごく一部であり、浴びるほど食べるわけでもないから、それほど神経質になることもないといわれます。
それをいうなら、逆に大根おろしの硝酸塩は、唾液によって亜硝酸塩に変化。魚肉と反応して発癌性の高いニトロソアミンにかわるという話もあります。
(こちらも、量的には気にするほどの危険性ではないといわれています)
いずれにしても、大根おろしは、主食にも主菜にもならず、量的に食べられるのはたかが知れています。
劇薬じゃあるまいし、皿の片隅の微量を食べて病気知らずになれたら、苦労はありません。
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食べ物だけで健康を得ようという発想がそもそも不健康
どんな食材も、「人間に食べられるため」ではなく、それぞれが固有の生命体として存在しています。
ですから、人間がそれを食べて、いいことばかりではなくても、何ら不思議はありません。
もちろん、全食材からデータを取ったわけではありませんが、ひとつの食材には、人間の健康に役立つ成分もあれば、損ねるものも含まれていて、それを様々な食材とともに摂取することで、必要な栄養を補完したり、逆に毒を消したりしているのだと思います。
なのに、「××が健康によい」などという近視眼的な情報に振り回され、特定の食材に偏る「ばっかり食べ」を行ってしまったら、「様々な食材とともに摂取する」バランスが崩れてしまいます。
むしろ、それによる健康リスクのほうが心配です。
運動するとか、ストレスのない生活を心がけるとか、健康というのは人間にとってもっと大きな視点から見るべきものであり、一食材だけで変わるものではないと思いますが。
それとも、昨年末、大根豊作のニュースがありましたが、今回とりあげたのは、大根を消費させるための情報なのかな、なんて穿った見方もしています。
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