デロイト、カンヌ8冠の制作会社買収:止まらないコンサルの広告業拡大

米広告代理店のデロイトデジタル(Deloitte Digital)は2016年2月29日(米国時間)、カルフォルニア州サンフランシスコ拠点の独立系クリエイティブエージェンシーのヒート(Heat)を買収したと発表した。取引の詳細は非公開。広告業界でのコンサル、テクノロジー企業による買収は2016年になっても止まる兆しはなく、一部の企業は無視できない規模に成長している。

デロイトデジタルの最高経営責任者、アンディ・メーン氏はプレスリリースで「『クリエイティブ・デジタル・コンサルティング』という新しいマーケットカテゴリーを創った。ヒートの素晴らしい、輝かしい受賞歴のあるクリエイティブを傘下に加えることで、市場をリードしてきた我々のデジタルビジネスが完璧になる」と語った。

ヒートは2004年創業。2015年のカンヌ国際広告祭では、ユーザーが個々に応援するアメリカンフットボールチームのシェア可能なGIF画像を制作できる作品で初受賞にもかかわらず8部門獲得に成功した。ヒートの会長、スティーブ・ストーン氏は「デロイトと力を合わせれば、巨大なチャンスを得ることができる。我々の仕事をより上のステージに載せられる。より大きなリソースを手にし、クリエイティブがキャリアを築くのに重要な、クライアントとの関係を結ぶことができる」と語っている。

米最大級のコンサル系代理店

デロイトデジタルは大手コンサル企業デロイトの広告代理店部門。コンサル系のエージェンシーとして米国最大規模。2012年設立から、2015年通年の売上がグローバルで約21億ドル(約2300億円)、従業員数は7000人と急速に成長している。

同社は広告代理店業務だけでなく、戦略立案、ロジスティックス、税務と多岐にわたるサービスを提供。ただ、マーケティングではクリエイティブがキャンペーンの成否を大きく左右するケースが大きい。また、コンサル、テクノロジー企業がそもそも制作部門をもたないこともあり、クリエイティブエージェンシーを買収する事例は多い。

PwC、IBMも買収攻勢

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)も2014年のデザインエージェンシーの買収により参入。WSJによると、広告代理店部門「PwCデジタル(PwC Digital)」の2015年売上高は12億ドル(約1300億円)。現在欧州とアジアでデジタルクリエイティブ企業2、3社の買収を進めているという。

IBMの「IBMインタラクティブ・エクスペリエンス」は1月末から2月初旬の1週間で、デジタルエージェンシー2社を含む3社を買収した。広告部門の従業員数は1万人になり、広告ホールディングス5位の電通イージス・ネットワーク全体の4分の1程度に達した。2015年の売上高は19億ドル(約2100億円)。

ほかにも、アクセンチュア、マッキンゼー、KMPGなどがエージェンシー部門を拡大させようと躍起だ。

Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock/GettyImage