北朝鮮の人権問題が国際的な関心事になったのは、脱北者たちの告発のおかげだ。北朝鮮に向け、ビラやラジオの伝播という「真実のウイルス」をまき散らしているのも脱北者だ。彼らの活動がなければ、北朝鮮の民主化運動は完全に困難だった。
北朝鮮の4回目の核実験以降、非核化というパラダイム自体が変化した。韓米両国政府の関係者たちは、北朝鮮の体制転換以外に方法はないと、公然と主張するようになった。これはすなわち、金正恩政権の退場だ。
その先鋒となっているのもやはり脱北者たちだと言わざるを得ない。信念によって武装した脱北者たちのノウハウは、北朝鮮の体制を変化させられる最高の武器だ。北朝鮮が核やミサイルによって脅すのなら、韓国には脱北者という核ミサイルがある。脱北者集団は北朝鮮の変化を主導している貴重な戦略的資産だ。
米国政府が脱北者団体に対する資金援助を再開したのもそのためだろう。北朝鮮の民主化プロジェクトに油を注ごうというわけだ。後ろ手を組むだけの韓国政府とは対照的だ。韓国政府が脱北者団体の活動に対し支援している金は1銭もない。支援をしたくても野党が反対しているため支援できないという。全くあきれた事態が繰り広げられている。
脱北者たちの戦略的な価値に比べ、韓国は彼らをあまりにも粗末に扱っている。韓国に来た多くの脱北者が、差別や無関心、貧困を訴えている。韓国に失望し、第三国に移住したり、はなはだしくは北朝鮮に戻ったりする脱北者もいる。
2500万人の北朝鮮住民は、脱北者を通じ、自分たちの未来を考えている。脱北者が韓国社会に背を向けては、統一のための資産として活用できなくなる。北朝鮮の住民たちも韓国を信頼しなくなる。韓国の核武装論まで出てくる中で、脱北者という核兵器を礼遇する韓国は、戦略的な知能が低いとしか言えない。