「ある国が自国の安全確保を図る場合、必ず他国の安全上の利益と地域の平和と安全を考慮しなければならない」
これは韓半島(朝鮮半島)への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題をめぐり、中国が掲げる名分だ。もっともらしい主張で、韓国の一部知識人や左派が同調している。しかし、中国にはそんな主張を行う資格があるだろうか。
1980年代初め、中国は自国内に米国の軍事施設を誘致し、ソ連を監視していたことがある。カーター政権が提案した秘密プロジェクトで、中国の指導者、トウ小平氏の同意で推進された。米国の基地は中ソ国境から300キロメートル離れた新疆ウイグル自治区内に建設され、ソ連のミサイルの性能や弾頭分離過程を観察した。当時ニューヨーク・タイムズはこの活動に中国人も加わり、米中が情報を共有したと報じた。中国は「自国の安全」を確保しながらも、「ロシアの安全上の利益」は無視した。中国は今も周辺国を作戦範囲とする核ミサイル、空母、高性能レーダーを配備し、周辺国の安全上の利益を考慮してはいない。
中国がアラスカ、日本に続き、韓国へと迫る米国のレーダー網を警戒することは理解できる。しかし、中国が北朝鮮の脅威にさらされた韓国の安全保障懸念を無視したまま、「韓国のTHAADは米国の中国監視用だ」と決め付け、あらゆる脅しをかけるというのは、責任ある国家とは言えない。
事実、中国は数年前、自国の安全保障を大きく脅かす日本のレーダー配備には無反応だった。米日が2006年、13年に青森、京都に設置したXバンドレーダー(AN/TPY-2)は、探知範囲が2000キロメートルで、中国の黒竜江省、内モンゴル自治区、山西省から広東省までをカバーする。一方、韓国が検討している終末段階レーダーは探知範囲が800キロメートルで、中朝国境の鴨緑江から豆満江(中国名・図們江)が限界だ。その上、中国はこのレーダーが中国に向いているかどうかを衛星で把握できる。中国の韓国に対する圧力が脅威を誇張した「ハリウッドアクション」であることを専門家は見破っている。