韓国は植民地支配からの解放後、60年以上にわたり成長の時代を享受してきた。2世代にわたって経済成長の恩恵にあずかった。そのため国民の多くは現在の豊かさを「当然受け取るべき配当金」のように考えている。北朝鮮に対して優越感を持つようになってからも30年が過ぎた。1989年にベルリンの壁が崩壊すると、イデオロギー戦争の勝利を味わい、その後脱北者が続々と韓国側に入ってきたことで「完勝を収めた」と思い上がり、自己陶酔してしまった。飢えに苦しむ北朝鮮の同胞たちに暖かい光を差し伸べようという慈善イベントが相次いで企画され、うぬぼれによる達成感は最高潮に達した。
そうしている間に北朝鮮は核とミサイルを開発した。専門家たちは北朝鮮の製造した核爆弾について、日本の広島・長崎に投下された原子爆弾と同じレベルだと指摘する。ミサイルは韓国製よりもはるかに優れ、大気圏を突き抜けて宇宙へと飛んでいった。われわれがどんなに多くの戦闘機を保有し、高性能のミサイル迎撃システムを配備しても、粗悪な核爆弾一つでソウルが廃墟になってしまうという状況なのだ。
健全な経済力は、国民においしい食べ物と暖かい服をもたらしてくれる。しかし強い軍事力は目・耳・口で楽しめるものを何一つもたらすことができない。このため十分に食べ物のある国民は重要な真理を忘れたまま暮らすことになる。軍事力のバランスが完全に崩壊して敵の足の下敷きになるまで、自分の財産と命を守る軍事力の育成に取り組まないのだ。
強い経済力も、強い軍事力の前では小さなちりのようにはかない存在だ。経済力の豊かさが軍事力によって守られなければ、反対に国の滅亡を招く原因となるものだ。スペインのピサロが黄金の国・インカ帝国を征服したときがそうだった。ピサロは大砲や銃で武装したわずか180人の兵士で、やりと弓を持って立ち向かう数万人のインカの戦士らと戦った。優れた武器のおかげで簡単に勝負がついたのだ。ピサロはインカの王を捕えると、一つの部屋を金塊で、さらに二つの部屋を銀塊でそれぞれ埋め尽くすよう要求した。