月の王冠

作者 梶原祐二

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ボクの記憶、描きますか? 梶原祐二

 近未来、北米共通通貨(アメロ)政策に端を発する、世界的な恐慌の結果、アメリカ合衆国は崩壊した。国内紛争に荒れた北米に対し、国連はロシア軍を中心とする多国籍軍を派遣。大規模な侵攻作戦を展開し、約二ヶ月間で掌握、沈静化に至った。  
 それから十年。
 地球から三十八万キロ離れた月の公転軌道上、ラグランジュポイントL4に位置するロシア中国日本三国連合宇宙ステーション(月の王冠)では、(自閉症スペクトラムへのBMアプローチによる治療)という、神経細胞群活性連携の研究事業が進んでいた。 ミラーニューロン群の活性連携不全を、自閉症の元凶と考える研究グループが、筋電性システムの触感フィードバックの応用技術で、シナプスに活動電位をエンコードさせるシステムを考案した。
 その最初の被験者、早乙女一也を抱える羽瀬バイオマテリアル・リハビリテーション研究所では、BM療法士、葵 洋子がその検査オペレーションを担当していた。
 日々の治療の中で、早乙女は少しずつ、複雑な「人間らしさ」を手に入れて行く。
 そんな最中、月面から高度百キロ地点に対して機械通信がやりとりされる。衛星の姿勢制御・搭載機器の起動に関するコマンドである。
 旧合衆国自由主義者によるテロリズムの危険性を察知した治安管理局では、早速(月の王冠)のカウンターテロレベルを上げた。ある日のこと、一等治安管理官、沢木亨二は0・3Gステージ回廊の気密喪失事故に巻き込まれる。現場で助け出した少年は、偶然にも自閉症患者の早乙女一也であった。
 事故をテロ攻撃と判断した管理局では、沢木亨二を専任捜査に当てた。乗り気でない沢木だったが、早乙女一也が現場の目撃情報を持っていることを知り、彼の抱える(サヴァン症)の特徴である、映像記憶の絵画による完全再現、という技能を使って容疑者の特定に迫る。
 次第に近付いていく犯人像、着々と準備されている第二のテロ計画の存在が少しずつ明らかになっていく。
 宇宙ステーション(月の王冠)を舞台に、(サヴァン症)の少年の記憶が謎を解き明かす、近未来アクションスリラー。

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小説情報

執筆状況
完結済
エピソード
37話
種類
オリジナル小説
ジャンル
SF
タグ
SF 近未来 人情 ガンアクション
総文字数
185,126文字
公開日
最終更新日
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3人
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11

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