『DAMAISM』を読んで、「すごい新人」とは思わなかった。
そういうレベルじゃない。
ただただ「すごい漫画」だと思った。
この『DAMAISM』は、”けん玉”の漫画だ。
けん玉…。
やったことがない人は、さすがに少ない。
でもやり込んだ人も、そうはいない。
「けん玉フリースタイルバトル世界ランク3位の過去話 ※フィクションです」とのこと。
そういったマイナーなジャンルを漫画で描く方法は、おおまかに2つある。
ひとつは、主人公と競技の出会いを描く方法。
「そんなジャンル知らない」と主人公に言わせ、ひょんなことから、その道のプロフェッショナルのプレイと出会う。それを目にした、主人公が見よう見まねでやってみたら、実は隠れた才能があったというパターン。主人公と読者の目線をまず揃えておいて、その道の上位者に才能を認知させることで、自然と物語に読者を引き込む。
もうひとつがこの『DAMAISM』のような、主人公がそのジャンルで「すでにすごい」というパターン。有名どころだと松本大洋さんの『ピンポン』などがそう。この方法のメリットは、いきなり主人公のかっこいいプレイを「隠れた才能」というレベルでなく(まだ上はあるにせよ)全力で描けること。ただデメリットもある。それは「読者が誰もついてこれない」可能性もあること。しかし『DAMAISM』はそこを「主人公とジャンルは出会っているけれど、主人公と世界は出会っていなかった」という方法で、巧みにクリアしている。すごい。そうか、こんなやり方もあったか。
古式ゆかしい漫画家への道といえば、持ち込み、投稿から始まる。
やがて担当編集がつき、二人三脚で漫画を描き、デビューする。
けど最近は違う。
誰でも投稿できる場が、WEB上にあちこちあり、読者と直接つながる。
そんな新人発掘の場を出版社も作るようになってきた。
『少年ジャンプルーキー』もそのひとつだ。
こういうやり方に対し、いまどきの編集者に新人を育てるスキルがないからだ、という批判もある。でもそこから、こういう作品が出てくるとなると、いやいやこのスタイルもすごいんじゃね?と思う。漫画のルールはただひとつ。おもしろければなんでもいい。ただそれだけだ。
記事へのコメント
コメントする »
人気記事
-
1あるマンガのせいで、今年に入ってまだ一度もシャンプーを使っていない私の頭に起きたことをお教えします。
-
2N◯Kが絶対に放送できない夜のプロフェッショナル・仕事の流儀『AV列伝』
-
3「二股されている女性に読んでほしかった」『彼女のいる彼氏』矢島光先生ロングインタビュー
-
4「生きる価値のない人間」は臓器を売り払ってサヨウナラ『ギフト±』
-
5「”やらない”人生もあるけど、”やる”人生の方が面白い」愛人教授が教える不倫入門『フリンジマン』
-
6ニートを続けるのは才能だ!!!真のニートをそこに見た『まめきちまめこニートの日常』
-
7宇宙兄弟最新刊レビュー
俺と文春と伊東せりかの大炎上。ベッキーに今読んで欲しいマンガ。 -
8もつ鍋を食べたらヒトの歯が出てきたときの恐怖『うなぎ鬼』
-
9あけましておめでとう!2016年最初の週間ランキング!1位を取ったレビューはどれだ!?
-
10ドピュッ!この擬音でお察し下さい。タイトルが局部の名前なので明記できないWEBマンガが最高すぎて度肝をヌかれる!!
-
11モテるためにまだ服なんか気にしているの?『服なんて、どうでもいいと思ってた。』
-
12子作りに悩む漫画家夫婦が体験した不妊治療の現実と、誰も教えてくれない里親の話『うちの子になりなよ』
-
132,000万部を超えたアメフトマンガ!『アイシールド21』そのヒットの理由とは?
-
14失恋してライフ0になる前に学ぼう!マンガ「彼女のいる彼氏」にでてくる危険な男子たち
-
15カルトでもいい、たくましく育ってほしい。。。? 『カルト村で生まれました。』
会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。
※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。