メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

若年認知症 働き続けられる支援を

 認知症は高齢者だけがなる疾患ではない。65歳未満で発症する若年認知症もあり、厚生労働省の2009年発表の実態調査では4万人弱が確認されている。

     もの忘れなどの症状が出て日常の生活に支障をきたすようになっても、年齢が若いために認知症と気付かず、職場でのトラブルが増えて仕事を失うことがある。若年認知症への理解と啓発に努め、早期診断と支援体制を拡充すべきである。

     厚労省の調査では、発症年齢は平均約51歳で、男性の方が女性より多いことがわかっている。脳血管性型とアルツハイマー型の二つがほとんどだが、多量のアルコールを飲むことで脳が萎縮するアルコール性認知症もある。

     症状としては、仕事やプライベートなことで大事な予定を忘れてしまう▽日付や場所がわからなくなり、出かけた先で迷子になる▽買い物でお金を払うときに間違えてしまう▽車の運転では車線をはみ出したり、ブレーキが遅れたりする−−などが挙げられる。

     高齢者の認知症と病理的な差異はないとされているが、受診をためらう人が多く、実際に病院で診察を受けても、うつ病や更年期障害と誤診されることも少なくない。

     深刻なのは、発症するのが働き盛りの年代のため、働くことが困難になった場合の経済的困窮や精神的なショックが大きいことだ。住宅ローンや子どもの教育費などの負担がのしかかり、家族全体が困窮に追い込まれることがある。

     若年認知症の場合は、40歳以上であれば介護保険の特定疾患の対象となり、訪問サービスやデイサービス、ショートステイなどの介護サービスを受けることができる。ただ、現に働いている人のためのサービスがないため、受給資格は得られても介護保険を利用しない人が多い。

     滋賀県守山市の「もの忘れクリニック」(藤本直規医師)は若年認知症の人が仲間と出会って活動できる場を提供し、雇用先の企業や家族へ理解・啓発を促す研修を実施してきた。患者の職場の上司や産業医と情報を共有し、その時々の能力に合った仕事内容に変えてもらったり、必要に応じて配置転換をしてもらったりすることで就労の継続に努めている。

     各地の障害者福祉を担っている社会福祉法人の中にも、農作業などを通して認知症の人の就労支援に乗り出し、要介護度の改善に実績を上げているところがある。

     「できないこと」よりも「できるところ」に着目し、自尊心を守りながら働き続けられるようにすることが大事だ。社会全体で若年認知症の人を支援していかねばならない。

    あわせて読みたい

    制限なく記事をお読みいただく方法はこちら

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです
    毎日新聞のアカウント

    のマークについて

    話題の記事

    編集部のオススメ記事