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国が管理する空港の先陣を切って、仙台空港がこの夏に民営化される。使われ…
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国が管理する空港の先陣を切って、仙台空港がこの夏に民営化される。使われるのは運営権方式という手法だ。滑走路などは引き続き国が保有し、管制業務も公務員が担う。航空会社への路線開設・増便の働きかけやターミナルビルの整備・経営といった「運営権」を民間企業が買い、空港を経営する。
関西空港と伊丹空港の一体運用を進める新関西国際空港会社も同様の手法を採ったが、こちらは株式会社で出発した空港経営が多額の借金を抱え、運営権の売却で経営を立て直すのが狙いだ。税金を投じて全国各地に造った空港を、民営化を通じて地域の拠点にできるかどうか。東日本大震災の被災地でもある仙台が試金石となる。
仙台空港の運営権を得たのは東急電鉄グループと前田建設工業、豊田通商の連合体だ。22億円を支払って少なくとも30年間は経営を担う。
3者は母体となる会社を共同出資で設けた。宮城県と地元市・企業の第三セクターだったターミナルビル会社を買収。店舗を大幅に増やし、格安航空会社用の搭乗施設を新設するなど、総額で340億円を投資する計画だ。航空会社から徴収する着陸料の体系も工夫し、路線網の拡充を目指すという。
安全・安心を最優先に、乗客に負担をつけ回しすることなく、黒字経営を保つ。難題だが、民間の知恵と資金による挑戦に期待したい。
最大の課題は、地元の産業、とりわけ農林水産業や観光事業と連携して地域おこしの一翼を担い、空港経営との相乗効果を実現できるかどうかだろう。
仙台空港の活用策では、震災後にカジノ施設の誘致構想が浮上したこともある。東急なども不動産開発のノウハウを持つが、商業施設や住宅といった「ハード」整備を先行させる考えはないと強調する。
打ち出したのは、東急のアジアの店舗での物産展の開催や近隣の漁港と組んだ輸出の仕組みづくり、伊達政宗にちなみ、空港近くを流れる貞山堀での桜の植樹への支援といった「ソフト」面での対策だ。
各地で取り組みが本格化しつつある地方創生では、深刻な財政難のなかで、地域の産物や文化をどう生かすかが問われている。地元の自治体とも力を合わせ、知恵を絞ってほしい。
仙台空港はJR仙台駅と鉄道で直結しており、東北の空の玄関だ。空港民営化をきっかけに、被災地を含む東北全体が協力し、世界に売り込んでいく機運を高めたい。
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