トランプ氏は大統領まで駆け上がるのか? 町山智浩さんが占う
今年11月の米大統領選に向けた候補者選びが進む中、最も注目を集めるのが、共和党からの指名獲得を狙う実業家のドナルド・トランプ氏(69)だ。過激な発言や政策を掲げる反主流派ながら、熱狂的な支持を受けている。3月1日には予備選や党員集会が10州以上で行われる最大の山場「スーパーチューズデー」を迎えるが、トランプ氏はこのまま突っ走り、大統領にまで駆け上がるのか? 米在住で映画評論家としても知られるコラムニストの町山智浩さん(53)に、人気の理由や今後の展望を聞いた。(構成・高柳 哲人)
当初は「その他大勢」の一人だった「アメリカの不動産王」ことトランプ氏が、今や共和党の指名争いで最有力候補となっている。「イスラム教徒の米入国を一時禁止」「メキシコ国境に壁を造り、1100万人の不法移民を強制退去させる」などの政策はあまりにも過激だが、それでも強い支持を受ける理由を、町山さんは「既存政治への不満の表れ」とした。
「共和党と民主党の支持率は、それぞれ30%を切っていると言われる。今の政治に納得していないんです。それを打ち破りそうな候補者が出て来たということ」。共和党のトランプ氏、民主党では初の女性大統領を目指すヒラリー・クリントン前国務長官(68)と接戦を演じているバーニー・サンダース上院議員(74)が、“救世主”として注目を集めるようになったという。
「トランプ人気」の中心は白人の中産階級だ。「いわゆる『プアホワイト』と呼ばれる人たちは、共和党を支持しているものの経済的恩恵がない。それでも『キリスト教を守ってくれる』というモラル的メリットがあると妥協してきた」。そこに、ウォール街とは関係のないトランプ氏が出てきて、金持ちのためではなく中産階級向けの公約を掲げた。「支持されるのは当然です」と町山さんは説明する。
これまでの予備選でトランプ氏は3勝1敗。2位グループのマルコ・ルビオ上院議員(44)、テッド・クルーズ上院議員(45)を引き離し、指名争いで優位に立つ。「党主流派は、トランプ氏が選ばれたら党が崩壊するいう危機感がある。ただ、スーパーチューズデーで2位グループのどちらかが撤退しないと、トランプ氏で決まってしまう可能性が高い」と町山さん。ルビオ氏に一本化されれば逆転もあり得るとみており、「主流派の一番の敵は、トランプ氏ではなくクルーズ氏でしょう」と話した。
対する民主党はどうか。これまではクリントン氏VSサンダース氏は3勝1敗だが、得票率は小差だ。ただ、町山さんは「サンダース氏は社会主義者を自称しており、黒人やメキシコ系の票集めができていない。その点、クリントン氏は『オバマ大統領の政策を引き継ぐ』と公言している。スーパーチューズデーで決着がつくのでは」。現地時間27日のサウスカロライナ州予備選でも、クリントン氏は南部に多い黒人の支持をつかみ得票率で約50ポイント引き離し圧勝した。
では、トランプ氏が共和党候補となった時、クリントン氏に勝てるのか?「もし、サンダース氏が候補になればトランプ氏が大統領になるかもしれない。ただ、クリントン氏が相手では無理でしょうね」。町山さんの予想では、クリントン氏が大統領に最も近そうだが、果たして…。