中国中央部にある毛沢東の生地に向かう高速道路の両側には完成しても入居者のいない高層マンション群が林立する。湖南省長沙市では、世界一高い838メートルの高層ビルとして計画されたスカイシティの建設予定地が見られる。ほんの3年足らず前、起工式を行ったが、今、そこは即席の魚の養殖場となっている。
経済学者はかねて「摩天楼の呪い」と呼ばれる学説について議論してきた。世界最高の高層ビル建設と、ほぼ同時期の金融危機との間には不思議な相関関係があるとする説だ。
今日、世界経済で最も重要でかつ最大のリスク要因は、中国の不動産市場だと指摘するアナリストがいる。2011~12年の2年間で中国が生産したセメントの量は米国の20世紀全体の生産量を上回ると聞けば納得できるだろう。
近年の中国の建設ブームは、地方の役人が過熱させてきた。土地の販売額のかなりの部分が彼らの懐に入るからだ。中国経済は投資への依存率が異常に高い。国内総生産(GDP)の半分近くが投資支出だ。
15年には中国経済が減速し、国内上位70都市の平均住宅価格が下落したというのに、不動産投資は1%増加した。中国の成長率は低下し、世界の商品価格が下落している中で、中国の不動産部門はいまだ本気で調整に着手すらしていないということだ。不動産投資は遠からず確実に減少に転じる。そうなれば、中国の金融システムにも重大な影響が及ぶ。
中国の複数の都市の役人の話を聞く限り、彼らが考える解決策とは、新しい地区で開発を始め、「質の高い」不動産開発業者に格安で土地を提供するというやり方だ。土地の購入費が安ければ、その物件は格安で販売できる。
これにより新たな資金の流れが生じ、土地からの収入が復活し、GDPが増大すると地方の役人はまだ思っている。しかしこうした発想が今もまかり通っているとすれば、冒頭のスカイシティの起工式の時点で中国には「摩天楼の呪い」が訪れていたのかもしれない。
By Jamil Anderlini
(2016年2月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.