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 福島第一原発の事故をめぐり、検察審査会から「起訴議決」を受けた東京電力の勝俣恒久元会長(75)ら元幹部3人について、検察官役の指定弁護士が29日、業務上過失致死傷の罪で東京地裁に強制起訴した。元幹部3人が法廷に立ち、事故の刑事責任を問われることになる。

 起訴されたのは、勝俣元会長のほか、武藤栄(65)、武黒一郎(69)の両元副社長。事故を予見できたのに安全対策をする義務を怠って原発事故を発生させ、周辺の病院の入院患者を避難中に死亡させるなどしたとされる。

 東京地検は3人について2013年9月、「事故の予測は困難だった」などとして不起訴処分にした。しかし、検審は14年7月に「起訴相当」と判断。再捜査した東京地検は再び不起訴としたものの、検審は昨年7月、起訴するべきだとする2度目の議決をした。これを受け、5人の検察官役の指定弁護士が、東電元幹部らから検察が事情聴取した調書などの証拠を読み込んできた。

 検審の議決は、震災前に高い津波が来る試算結果があったことなどを重視。「勝俣元会長らは『万が一』にも備えておかねばならない高度な注意義務を負っていた」と指摘した。

 公判は、元幹部3人が事故を事前に予測できたのか、対策をしていれば事故を防げたのかが最大の争点となる。これまで非公開だった東電の内部資料が証拠として提出されるとみられ、勝俣元会長らも法廷に立ち被告人質問を受けるなどして審理される。