DNAレベルで違う養殖鮭と天然鮭…天然っぽい養殖方法を模索中。1/1

今月nature communications誌に発表されたオレゴン州立大学のMichael Blouinらによる研究で、養殖で生まれた鮭は野生のものと比べて、何百通りものDNAが異なっていることがわかりました。

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養殖ものは、汚染・脂肪含有量が多いなどの問題も

現在、スーパーの海鮮コーナーに出ている鮭の7割が養殖です。養殖の鮭は、天然の環境で育つ個体と比べて汚染されており、高カロリーの餌を与えられるせいで、健康に悪い脂肪含有量が高いと考えられています。

天然ものに与えるリスク

で有名なカナダのブリティッシュ・コロンビア州では、養殖場では海の外に作られていますが、「オープンネットと呼ばれるもので囲われているだけなので、病気や寄生虫が容易に海に垂れ流され、天然の鮭に被害を及ぼす危険性が指摘されています。

もうすでに、川のダム建設などで百年以上前から天然鮭の数は減っているのに、このことによって天然鮭は絶滅してしまうのではないか。

環境保全活動家らは懸念しています。

養殖ものは、野生に還っても繁殖できない

オレゴン州やワシントン州は、「いったん養殖で育ててから野生に還し、鮭の個体数を補充する方法」で、鮭の再生産を成功させてきました。
しかし、養殖された鮭は子孫を遺す能力において、もともと天然のものと比べて劣ることが科学者らによって指摘されていました。

2011年のBlouinらの研究では、養殖で育てられた鮭は世代を隔るに従って、少しずつ飼いならされてしまっていたことがわかっています。
「飼いならされる」ということは、野生の中で子孫を再生産させるのが難しくなるということです。

700以上の「遺伝子情報」に違いが

今回チームは、鮭の一種であるニジマスで、養殖の親から生まれた個体と、オレゴン州にあるフッド・リバーという川で育った天然の個体の遺伝子との比較研究をおこないました。

その結果、700を超える遺伝子情報に違いが見つかりました。

たった1世代養殖したことが、養殖の個体を遺伝子的に異なるものに変化させてしまったのかという大きな疑問が湧きます。

この研究は、養殖される中でどのような遺伝子的要素が生き残るのか?
養殖の条件としてはどんな条件がそうさせているのかを把握するための、重要な一歩になったと思います。

Blouin

養殖環境で「発達した能力」、「失われた能力」

天然のニジマスは単独行動し、縄張り意識が強いのが特徴です。しかし養殖場では、イワシのように団体生活を送らされています。

このような「他の個体と頻繁に擦れ合う環境下」にあっては、たった1世代でも、傷からの回復力といった免疫システムを発達させただろうことは容易に推察できます。

Blouinは、断言するにはデータ不足としながらも、団体生活をさせられていると、群れの中で擦り傷ができたり、噛み付かれたりしやすいため、傷からの回復能力を増強させてきたという仮定はすでに立てているそうです。

「養殖の鮭」が、オレゴン州の天然鮭の個体数を脅かしているという明確な証拠はないのですが、養殖の個体が天然の個体と交尾すると、天然の個体の健康状態が悪化するのではないかと一般的には考えられています。

しかし、アメリカの西海岸は天然鮭を収穫したり、彼らが子孫を遺すのによりずっと良い場所である可能性があることがわかりました。

天然鮭のような養殖鮭の育成方法の模索が、天然鮭の個体数の回復にも繋がります。

Blouinは、「養殖という環境下で、どのような魚の特徴が望ましいかが把握できれば、養殖鮭への生き残りプレッシャーを減らせるような養殖方法に変えることも可能になるのではないかと考えます。

より天然に近い養殖鮭を作ることができれば、天然の個体に与えるリスクを減らしながら収穫することができるとしています。

カナダ、養殖の様子(0:35)


【参照】

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