運転中に発症すると重大事故につながりかねない脳や心臓の疾患を早期に発見するため、国土交通省がバスやトラックなどの運送業者に推奨している人間ドックを、8割以上の業者が実施していないことが28日、国交省の調査で分かった。
14年4月に改定された運送業者の運転手の健康マニュアルでは、義務である定期健康診断に加え、人間ドックや脳磁気共鳴画像装置(MRI)検査、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を把握するための検査などを受診させるよう推奨している。
国交省は昨年末~今年1月、バス、トラック、タクシーそれぞれの業界団体を通じたアンケートを実施し、計390社が回答。人間ドックを実施していると回答したのは、全体の14%に当たる56社だけだった。
業態別では、バス会社が最も高く22%で、トラック16%、タクシー5%だった。規模別では、従業員数が50人未満のバス会社は9%だったが、50~300人未満は23%、300人以上では37%。トラック、タクシーとも従業員数が多いほど受診率が高かった。
SAS検査はバス会社の72%が実施する一方、トラックは42%、タクシーは16%だった。脳MRI検査はいずれも20%以下だった。
未実施の理由として、会社の費用負担が重いことを挙げた業者が多く、大半が「負担が5千円以下なら受診可能」と答えた。国交省によると、SAS検査は5千円程度で可能だが、人間ドックや脳MRIは2万~3万円以上かかるという。
運転手の健康問題が原因の死亡事故は年30~40件あり、国交省は安価に実施できる検査方法などを研究して2015年度中に検査の普及策をまとめる方針。〔共同〕