希望捨てない…在日コリアン生徒意識調査
4割「いつか分かり合える」
在日コリアンらの排斥を訴えるデモや街宣活動に朝鮮学校高級部(高校)の生徒らの過半数が憤りを感じる一方、デモや街宣の参加者について「いつか分かり合える」と考える生徒が「理解し合えない」を上回っていることが、研究者らの調査で分かった。外国にルーツを持つ10代後半の若者たちは、差別をあおるヘイトスピーチに傷つきつつも、希望は捨てていない。【林田七恵】
意識調査は金尚均・龍谷大教授(刑法)らが昨年6〜8月、全国九つの朝鮮学校高級部と二つの民族学校の高校生と、外国にルーツを持ち大阪府内の公立高校に通う生徒の一部を対象にアンケートを実施。1483人の回答を得た。ヘイトスピーチが社会問題化して以降最大規模の調査とみられ、「人種差別撤廃施策推進法」の成立を求める国会議員らの25日の院内集会で、結果の一部が報告された。
それによると、回答者の大半の1453人が朝鮮半島にルーツを持ち、全体の80%が生活の中で「差別を感じる」と回答し、排斥のデモや街宣に遭遇した生徒は25%だった。デモや街宣には全体の76%が怒りを、46%が恐怖を感じたと表明(複数回答)。怒りや恐怖の理由は、73%が「人間として平等に扱われていない」と答えた。
一方、デモ参加者をどう感じるか聞いたところ、「許せないが、同じ社会に生きる人間だからいつか分かり合える」が全体の40%を占め、「許せない。絶対に理解し合えない」の38%を上回った。この結果について、金教授は「高校生は共生社会を作りたいと強く願っている」と話す。
研究者や弁護士などで作る「人種差別実態調査研究会」によると排斥のデモや街宣は昨年1年間に全国で376件あった。朝鮮学校はそれ自体がデモや街宣の標的となり、民族衣装の制服を着た生徒が登下校中に嫌がらせを受けやすい。
金教授は25日の院内集会で、「法整備や統計がなく差別がないことにされる一方で、排斥が堂々と行われている。在日コリアンを人間として平等に扱わないことが、日本の民主主義を壊している」と人種差別撤廃法の必要性を訴えた。人種差別撤廃法案は野党が昨年提案して継続審議中の理念法で、人種や民族による差別禁止や国の差別実態調査などを定める。