台湾の電子機器受託製造サービス(EMS)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業は、世界で初めて液晶テレビを商品化した日本のシャープに出資を含めて総額6600億円規模の支援を行い、同社を傘下に収める。韓国のサムスン電子もシャープ買収を目指していたが、最終的には鴻海に持って行かれた。
朝日新聞や日本経済新聞によると、シャープは25日、臨時取締役会を開き、鴻海による買収提案を受け入れることを決めた。鴻海は中国でアップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を受託生産するフォックスコン(富士康科技集団)の親会社。鴻海は最近、スマートフォン市場の停滞でiPhoneの成長も頭打ちになるとみて、収益源を多角化するため、シャープ買収に動いたとみられる。
シャープはテレビ、スマートフォンなどの完成品、液晶パネル、イメージセンサーなどの電子部品を生産している。業界では鴻海がシャープを買収後、スマートフォンの画面に使われるOLED(有機発光ダイオード)パネル事業を育成し、サムスン電子と競合するとみられている。鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長はこれまで「シャープと提携し、サムスンに勝つ」と発言してきた。OLEDは自ら発光する半導体を利用した画面部品だ。画質が鮮明で、スマートフォンを曲面状にしたり、薄型化したりするのに適している。
現在スマートフォン用のOLEDパネル市場は、サムスン電子の子会社であるサムスンディスプレーが90%以上のシェアを占めている。アップルは早ければ来年にもiPhoneにOLEDパネルを採用するとされ、鴻海は長年の顧客であるアップルを集中的に攻略し、シェアを高める構えとみられる。米ウォール・ストリート・ジャーナルは「アップルはスマートフォンのOLEDパネルを全量サムスンに依存することを避けようとする」と予想した。
シャープは現在、サムスンディスプレー、LGディスプレーなど韓国企業が主導する液晶パネル技術を一時はリードしていた企業だ。世界で初めて液晶テレビを商品化し、60インチ以上の大型液晶パネルを主力とする工場も世界で初めて稼働させた。しかし、2000年代半ばに韓国企業が液晶パネル分野に集中投資し、販売量が減り始めた。
サムスン電子もシャープの買収候補として取りざたされた。2013年に104億円を投資し、シャープの株式3.04%を取得。李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は何度も訪日し、シャープの経営陣と会った。鴻海による買収が決まる直前、サムスン電子はシャープの堺工場買収に動いていたことが分かっている。サムスン電子は数兆ウォンを投じ、大型液晶パネル工場を新設する代わりに、堺工場の買収を目指していたとされる。
鴻海はシャープ買収をめぐり、日本政府が主導する産業革新機構(INCJ)と競合し、最近までシャープは同機構の再建計画案を受け入れるとみられていた。日本政府はシャープの技術が海外に流出することを懸念していた。しかし、鴻海は同機構が提示した出資額(3000億円)の2倍以上を提示し、買収戦に勝利した。