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 千葉県市川市の県指定の行徳(ぎょうとく)鳥獣保護区を見渡せる場所に立つ県行徳野鳥観察舎が、昨年末に休館した。耐震性が基準を下回ったためだ。だが首都圏にあって水辺の自然の観察拠点として30年以上親しまれてきた施設だけに、利用者から存続を求める声が強まっている。

 「見て、アオサギが大きなウシガエルをくわえています」

 祝日の11日、カメラや双眼鏡を手にした男女約10人が、普段は入れない行徳鳥獣保護区内を散策した。毎週日曜と祝日、NPO法人「行徳野鳥観察舎友の会」が案内する観察会。カンムリカイツブリやツグミにレンズを向ける。カワウのひなが巣から首を伸ばしてエサをねだる様子や、ヨシ原の上を飛ぶノスリや絶滅危惧種のチュウヒも観察された。大量のタヌキのふんやオオタカが食べたとみられるドバトの羽根にも遭遇。友の会の佐藤達夫さん(44)は「季節によって違う鳥や小動物の生きる姿が見られるのが魅力」と話す。

 年間100~120種の鳥が飛来する保護区は、宮内庁管轄の新浜鴨(かも)場に隣接する56ヘクタール。その観察拠点として県が隣接地に1979年に建てたのが野鳥観察舎だ。鉄骨造り3階建てで、2、3階の観察室には計44台の望遠鏡が並ぶ。平日は小学生が授業で、休日には親子連れらが訪れ、毎年約1万人が利用してきた。

 だが、県は昨年末、耐震基準を下回ることを理由に、観察舎を無期限の休館にした。県行政改革審議会では、廃止を検討する施設に振り分けられた。

 県によると、施設を耐震補強するには約1億4千万円、建て替える場合には解体するのに約5千万円、簡易な建物で新設するのにさらに数千万円かかる。

 突然の休館に、利用者や野鳥愛好家らが再開と存続を求め、署名活動を開始。「行徳野鳥観察舎を愛する者一同」は2月2日までに9445人分を県に届けた。県自然保護連合などの団体も「休憩、トイレの使用、荒天時の避難など、利用者にはなくてはならない施設」として要望書を提出。存続を求める市民の声を受け、地元の市川市も「必要最小の建物に建て替えてほしい。費用負担にも応じる」とする要望書を県に提出した。