政府が盛んに叫ぶ少子化問題には未だ実効性のある解決策がほとんど見当たらない。そんな中で出生率が第二次ベビーブーム時並みの2.1人(!)、さらに基本的には結婚率も100%(!)、しかも離婚率がこれまた驚異の1.7%だという、にわかには信じがたいコミュニティがある。
それが本当なのか嘘なのか、外部からはすぐに検証する手段はないが、3000組が一堂に会する国際合同結婚式があり、参加する新婚カップルに直接話が聞けるというので、急きょ開催地の韓国・ソウルに飛んだ。
この国際合同結婚式は、旧統一教会、今の世界平和統一家庭連合(以下、家庭連合)が開催する世界的にも他に類を見ない大規模な集団による結婚式で、1990年代には日本でも芸能人・有名人などが参加して大きな注目を集めたものの、その後、霊感商法などが問題となり、報道もあまりされなくなっていた。
それが今も続いているというのにも驚きだが、振り返ってみると、式典自体の様子はニュースとして出ていたものの、そこに一体どんな人たちが参加しているのか、その個人の素顔については、ほとんど報じられておらず、ネット上には見た目の印象や噂レベルの情報があふれていて、どうもよく分からない。
実際に行ってみてどうだったか。それは想像をはるかに超える規模のド派手かつ非常に組織化されたセレモニーであり、また式典に参加している新婚カップルそれぞれも独特な結婚観や家庭観を持つ人たちで、まさに驚きの連続だったことから、式典のレポートと新婚カップルのインタビューを2回に分けてレポートする。
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世界62か国3000組、日本から778人が参加した結婚式

国際合同結婚式は2月20日、韓国・ソウルから車で2時間ほどの加平にある清心平和ワールドセンターという会場で開催された。
主催者の発表によると、会場には世界62か国から計3000組、うち日本からは778人が参加。これに加えてネットによる生中継を通して、世界で12000組が参加したという。
家庭連合の日本本部によると、これまで日本からは17万人以上がこの結婚式に参加していて、今回は統一教会が世界平和統一家庭連合という名称に変更してから初めての国際合同結婚式になるとのこと。

現地に行ってみて最初に驚くのは、やはりイベントとしての規模感で、3万人収容のスタジアム型の施設が参列客も含めてほぼ満席になっている。これまで見ていたあのニュース写真が、加工されたものでないことがよく分かった。

日本からも毎年この時期に数百組の参加カップルとその家族などの参列客で2千人以上が韓国に渡航していると言い、航空・旅行会社にとっても無視のできない規模のビジネスになっていることだろう。
日本人同士の初婚カップル専用宿舎を訪ねた
日本人の参加者は大きく分けて、日本人同士の初婚カップルと、彼らが既成婚と呼ぶ結婚した後に信仰を持った人たち、それと日本人と外国人のカップルという3つのグループがある。今回は、日本人同士の初婚カップルの宿舎を訪れた。
参加者は前日までに会場付近にある宿舎に集まり、まず結婚式の流れやさまざまな儀式の説明を受ける。
まずそこで不思議な光景を見た。
平均23~24歳の新婚カップルたち
一言で言うと、その雰囲気は結婚式というより入社式に近いのだ。
新入社員のような若者たちが、男女ペアになって座っている。それもそのはず、この場に集まっている参加者の平均年齢は23~24歳。学生も少なくなく、着ているスーツが見た目にしっくりきていない。

その若者たちが結婚するという。
こうしたレクチャーを受けている様子が入社式なら、宿舎の中は、さながら修学旅行のようだ。
意外なことに、宿舎の部屋は新婚カップルというのに男女別々になっている。さらに結婚式に出たからといって、すぐにその後、一緒に暮らすこともないらしい。
一体どういうことなのか。順を追って説明しよう。
まず、家庭連合では自由恋愛が認められていない。未婚カップルは、ほぼ例外なく見合いで出会い、結婚相手を決めて合同結婚式に臨む。
しかし、その時はまだ性的関係を結ばない。
結婚式の後、少なくとも40日間を開けて(宗教的な意味があるらしい)、夫婦の共同生活に移る。結婚式に出てから一緒に暮らし始めるまで、平均して2~3年は間を置くのだという。
こうした理由によって、初婚カップルの泊まる部屋も男女別々になっており、しかも彼らは日常的に教会の文化活動やボランティアなどで行動を共にしてきたことから、23~24歳の仲間たちが集まるこの不思議な空間は、それゆえに修学旅行っぽく感じられるようだ。
一連行事はタイトなスケジュールで進行

合同結婚式は、多数のカップルが挙式に参加するため、ツアーのように流れと時間が決まっている。

準備は前日の夕食を終えたころから始まる。女性たちは順番を待ってメイク・ヘアメイクをし、ウエディングドレスに着替える。

ヘアメイクは、まるでファーストフードのメニューを選ぶかのように、というと語弊があるかもしれないが、効率よく希望を伝えられるような髪型のパターンが掲示されている。

メイクと着替えが終わると、今度は記念撮影だ。

記念撮影が終わった後、朝5時から十数台のバスに分乗して会場に向かう。そして朝6時を過ぎたころから会場には、世界から集まったカップルたち、そして参列客が続々と訪れる。

式典は朝10時からだが、7時を回るころにはすでにほとんどのカップルが会場内のアリーナに参集。

たくさんのカップルが仲間同士でお互いの結婚を祝いつつ、参列客と一緒に写真を撮りあっていた。
式典が始まる前にはステージ上でリハーサル、そして歌や踊りのパフォーマンスがあった。そしていよいよ本番が始まる。
海外から主要メディアも集まる式典

国際的に見ても、これほどまでにド派手で視覚的にインパクトのあるセレモニーもそう多くはないのかもしれない。

会場には、BBCやAP通信、ロイター、AFPなどの国際メディアが入って報じていた。

また個人的に注目したのは、主催者側がメディアの扱いに長けていたことだ。

長年の大イベント開催によって知見を蓄えてきたのか、誘導が非常にスムーズで、どういう写真や映像をメディアに撮らせて報じさせようとしているのかもよく研究している印象を受けた。

まずアリーナに集められたカップルのうち、若くて比較的ルックスの良い人たちが前方の目立つ位置に座っている。

いや、それが不自然と言う訳でもない。全体的なレベルは高い(失礼!)。

既成婚と思われるシニア席は後ろだ。

また、一方に日本や韓国をはじめとするアジア系、もう一方に欧米系と別れて座っている。従って、たとえば欧米メディアはその定位置から狙えば画像としても具合のいいものが撮れるようになっている。

こうして取材陣にとっては欲しいものが撮れるし、それは結果として家庭連合の効果的なイメージ戦略にもなっているのだろう。
「気持ち悪い」という声もありますが?

あの数え切れないほどのカップルが集まる合同結婚式のニュースを見て、ネット上には、「気持ち悪い」「こんなので幸せになれるわけがない」などという声が少なからず見られる。
それを今回、本人たちに対して、率直にぶつけてみた。
それぞれのカップルの詳しいインタビューについては、次回まとめることにするが、現場責任者を長年務めているという人物は、次のように語った。
「以前は自分で望んで信仰を持った一世の人たちが中心で、相手についても神が選んだ相手と考え、ほとんど相手自体を見ずに受け入れることが多かった。そうした人たちにとって、一般的にどう見えるかなどを気にする人は少なかったように思う」

その子供世代である二世の場合、幼いころから教会でのさまざまな活動などを通してお互いに知り合う機会が多く、仲良しだと言う。その一方で結婚は愛の成長のためのものと考え、いつか天から与えられる相手のために純潔を守っている。
「以前とは異なり、今では相手と会って本人同士で話し合い、本当に一緒にやっていけそうか、本当にこの人が神の決めた人物なのかという目で見て結婚相手を決めている。その意味で、過去の祝福(結婚)は不安を乗り越えるイメージがあったが、今は感覚に差があるだろう。つまり、この人を思いっきり愛してもいいと、純粋に嬉しい、喜びの気持ちが強いように思う」

次回
「国際合同結婚式で結ばれた日本人男女8組の結婚観」では、実際に本人たちの言葉を紹介する。

<取材・文/鶴野充茂>