[東京 25日 ロイター] - シャープ(6753.T)は25日開いた臨時取締役会で、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業(2317.TW)による経営支援を受け入れるとともに、2018年初頭にも亀山工場(三重県)で有機EL量産の量を始めると発表した。有機ELはスマートフォン(スマホ)の主要部品になるとみられ、鴻海の世界展開に不可欠の戦略商品。日本の大手電機メーカーとして初めて外資の傘下で再生を期すシャープにとって、自社の技術力が問われる大きな課題が早くも浮上している。
会社再建をめぐる議論がもつれる中、高橋興三社長がこだわったのが「シャープのDNA」だった。「シャープって変わったことやるよね」という同社長の言葉通り、シャープからはエレクトロニクス産業の発展に貢献した独創性に満ちた製品や商品が数多く出ている。
例えば、世界最大の技術者団体IEEE(米電気電子学会)が産業発展に貢献した技術を称える「マイルストーン」に、シャープからは「テレビ用14型TFT液晶ディスプレー」など日本で最多となる3件が選ばれている。インターネットが本格普及する前の1990年代にシャープが商品化した携帯情報端末「ザウルス」は、もし通話機能がついていれば世界初のスマホだったとすらいわれる。
シャープの問題は、ユニークな商品開発力には定評がありながら、それを持続できず、失速するパターンを繰り返してきたことにある。「ザウルス」について言えば、投入時期が早過ぎて米アップル(AAPL.O)の「iPhone(アイフォーン)」にその名誉を譲るという皮肉な結末となった。
<ブランドなき鴻海、将来への危機意識>
そうしたシャープに時価総額の2倍を超える約6500億円の巨費を投じる鴻海は、買収のメリットをどこに感じているのか。
創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は「フォックスコン(鴻海の英語での呼称)にはブランドがないが、シャープにはブランドがある」(今月5日の記者団との質疑応答)と述べている。
「ゴウ氏には、ある程度ブランドがあり、自社開発能力があるシャープのような会社を手に入れないと、10年後は厳しいという危機意識があるのだろう」とベテランの電機アナリスト、若林秀樹氏は話す。
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