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ミーちゃんのこと

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ドーベルマンは飼っていないが、このブログの「コア」さが気に入ってて、楽しく読んでいる。だってそうだろう。仕事とか、受験とか、そういうブログはたくさんあるけど、ドーベルマンの魅力を語るブログって、ないから。「コア」度から言えば、突き抜けている。

たぶんここはドーベルマンの飼い主さんたちにとって、sanctuaryみたいな場所なんだろう。

トイプードルでもなく、ミニチュアダックスフントでもなく、ドーベルマンっていうのがシブい。愛を感じるわ~!

つくづく恐れ入ってしまうのが、使い古された言葉だけど、「犬猫好きには、悪いヒトはいないなぁ…」ということ。だって、これほど毒のないブログ、無いから。

 

ドーベルマンについては、語ることができないけど、にゃんこについて、ちょっとした想い出がある…

俺が高校2年の時、弟が捨てられていた子猫を拾ってきた。

安直に「ミーちゃん」と命名された。

ミーちゃんは気ままだ。風の吹くまま、気の向くままに行動する。

しかし、ミーちゃんは、夜になると決まって指定席で寝息を立てた。

勉強中の俺の膝の上、そこが彼の指定席だったのだ。

ミーちゃんのお陰で、机に長時間向かうことが苦痛ではなくなった。ただ、ミーちゃんを起こすのが可哀想なあまり、トイレ(特に「小」の方)に行くのを我慢して、膀胱炎になりそうになったのは苦い思い出だった。

大学進学が決まって、上京することになったが、ミーちゃんと別れるのがちょっと辛かった。でも、「猫は家につくもの」だから、仕方ない。

 

。。。大学一年のゴールデンウイーク、帰省したらミーちゃんは居なかった。

べそをかきながら話す弟によると、夜半に放浪していて、車に轢かれたとのこと。

夜半は俺の膝の上が指定席だったのに、その定位置を奪われたミーちゃんが、安らげる場所を求めてさまよっていたのかもしれない。

大きな自責の念と喪失感に襲われた。

…ミーちゃん以降、猫を飼っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回の続きを書く。

改めて言うが、バカ高校はヤンキー高校だった。動物に例えれば、肉食獣だらけで、クラスにはトラやライオン、チーターどもが集まっていた。

そんな中に一匹だけ、インパラが紛れ込んだ…そんな感じの生徒が1人だけいた。ハヤシくんである。

彼は、線が細くて小さくて、何て形容すればいいのかな…例えば「北斗の拳」みたいな暴力が支配する世紀末において、「ヒャッハー!水だぁ~!」等と叫ぶモヒカンのような雑魚キャラに、登場した一コマ目で瞬殺されるようなタイプ。言い方は悪いが、虚弱体質で、未熟児みたいな生徒だった。

だから俺も、暫くは、ハヤシくんの存在自体に気付かずにいた。

 

しかし、「暗記試験」である定期テストで、相変わらず俺はビリから5~6番目をウロチョロしていたが、ハヤシくんはいつも最後の方にいた。

そうなれば、彼の存在が嫌がおうにも気になってきた。

「俺の点数が悪いのは、カッコつけて暗記試験対策を敢えてやらないって決めていたからだけど、暗記試験は、いわば小学生でも、数時間勉強(記憶)すれば、満点がとれるのに、どうして彼は点数が悪いのだろう」

試験の回数を重ねるごと、その疑問は大きくなってきた。

だってそうだろう。腕力や暴力や体格で勝てない人間が、自分の存在感を示せるのは、試験などの勉強しかないからだ。

俺の場合、当時は腕力でも、少なくとも一対一なら負けることは多分、無い。だから、勉強以外でも自己実現は可能だ。しかし、ハヤシくんの自己実現は、勉強しかないだろう。

然るにハヤシくんはそれすらもしない。一体どうしてだろう。彼は俺の理解の外にある人間なのか、それとも本当に勉強ができないのか…

「機会があったら訊いてみたいな…でも、『本気で勉強してるんだけど、あの結果なんだ』って言われたら、彼の恥をクラスの連中に晒すようで、シャレにならないな…」

そう思いながら、いつものように昼休み、裏庭のしげみの中に行った。もちろん一服するためだ。

そしたら先客がいた。驚くことに、ハヤシくんだ。

「へぇ~、彼もタバコを吸うんだ~」と思いながら、俺は「おぉ!奇遇だね。ここへは初めてじゃないのさ」と彼に声を掛けた。

彼もビックリした様子ながら、はにかんで、「いつもの場所、上級生にとられてしまって…やります?」とマルボロを差し出してくれた。

俺は「洋モク吸ってるんだ~。おしゃれじゃん。サンキュー」と言いながら、丁度いい機会だ。彼に訊いてみよう。

「ハヤシくん、大きなお世話だけど、どうして定期試験、点数が悪いの?あんな暗記試験、ちょっとやれば満点とれるでしょうが」

「ゆうさんだって、どうしてやらないの。ゆうさんが本気出せば、楽々トップになれるじゃないですか」

「俺かい?…あんな試験、やるだけ時間の無駄じゃん」

俺は自嘲気味に答えたが、彼の返答は俺の想像を超えていた。

彼によれば、暗記試験対策をしないことによって、教員にこの試験の無意味さを判らせ、本来あるべき正常なシステムに復帰させるためだった。

「暗記試験の対策をしない」、その点に関しては同じだが、俺の座標軸はあくまでもバカらしい制度に背を向ける「自分」だった。しかし、ハヤシくんの座標軸は「学校のシステム」だったのだ。

もっとも、彼がそんな崇高な気持ちで反抗をしたとて、多分、大勢に影響はないだろう。しかし、それでも、やらないよりはマシだと、自分の信念に殉じることができる。それだけで正直、尊敬に値した。

「へぇ~!すっごいな。クールだねっ!でもさ、ビリケツになったら、二軍落ちになっちゃうよ」と訊くと、彼は「構わない。こんな高校で一軍だろうが二軍だろうが。それに僕は進学希望じゃないですから」と微笑んだ。

 

俺の場合、ヒトを評価する物差しは、信念をもって生きている、他人を思い遣れる、そういう美徳を持っているか否かだ。勉強ができる、スポーツができる、ルックスが良い、そういうものよりも大きな要素だと思っている。自分でも変な物差しだって自覚している。

ハヤシくんは、多分その虚弱体質みたいな性質である故、過去に色々といじめられてきたことは、想像に難くない。そんな彼が、易きに流れず、むしろ自分にとって困難な路を、信念をもって凛として進もうとしていることが俺にとって驚きだった。

俺もこの高校では大したの変わり者だろうが、彼の凄さには及ばない。俺も含めたバカしかいないこの高校に、彼のような尊敬できるヒトがいたのは驚きだった。

それ以来、ハヤシくんを揶揄したり、イジメたり、バカにしたりするヤツを見かけたら、「ハヤシくんの凄さ、オマエ等は知らないくせに、外見でヒトを判断するな!」あたかもそう言わんがばかりに、徹底的に反撃した。

しかし、彼は相変わらず、ひょうひょうと生きていた。腹が座っているんだな。俺には無理だ。

 

季節は冬、勉強の調子は相変わらずだったけど、「知らなかった自分」がら「ちょっぴり知識が増えた自分」になっていくのに、少しずつ、快感を覚えるようになってきた。

英語、数学、ようやく中学生レベルを卒業したのもこの頃だった。

だけど、思いもよらない悲しい出来事が、3か月後、俺に降りかかるとは、その時、夢には思わずにいた。