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 東日本大震災の被災地約600キロを歩いたマンガ家しまたけひとさん(42)=東京都=が、その体験をもとにマンガ「みちのくに みちつくる」(双葉社)を出した。東北にゆかりはあるが被災者ではない「後ろめたさ」から、「当事者と思いを共有したい」と2冊約600ページを描き上げた。

 主人公は3人。被災地踏破をネタに作品を描こうとするマンガ家、「悲しいもの探し」の震災取材に悩み報道機関を辞めたフリーライター、母親の故郷が津波で流された女子学生。いずれも被災者ではないが震災で心にひっかかりを抱えている。しまさんの分身だ。

 3人は震災から2年半後に青森県八戸市から福島県相馬市までの沿岸約700キロの「みちのく潮風トレイル」を歩く。環境省が整備中の自然歩道だ。3人は震災の爪痕を肌身で感じながら、行く先々で被災者の体験や思いを見聞きする。

 たとえば、家族は無事で修理した自宅に住み続けている失業者の青年は、就職面接で家族や家を失った人に仕事を譲った。行方知れずの愛犬を捜し続ける女性は「人も大勢見つかってないのに」と引け目を感じている。被災者も一枚岩ではない現実を知り、復興の遅れや風化への焦りに触れた3人は、罪の意識から目的を見失う。だが、景勝地に見とれ、ご当地グルメに舌鼓を打つことも一助になるはず、と旅を続けていく。

 マンガの内容は、しまさんの体験を再構成したフィクションだ。「当事者でない人が被災地へ行き、悩んだり、笑ったり、泣いたりすることも復興につながると感じた」と、しまさんは振り返る。東京生まれの東京育ちだが、宮城県登米市に母の実家があり、仙台市の大学に通ったため、東北に友人知人は多い。