米国からソフトウエア、もしくはオーストラリアからお気に入りの曲をダウンロードできる限り、IT(情報技術)通や英国の欧州連合(EU)離脱を願う人たち双方が、地理的近さが問題になったことはないという主張をしても驚きではない。これは英国のEU離脱「ブレグジット」を支持する欧州議会の保守党議員、ダニエル・ハンナン氏お気に入りのフレーズだ。だが、それはただの通説でもあるようだ。
2つの国を例に取ってみよう。一つは英国と歴史的な結びつきもあって同じ言語を話す国、ニュージーランド。もうひとつはただ欧州大陸の真ん中にあるだけの国、チェコ共和国だ。両国の2014年の経済規模は、有利な為替レートで換算すると、それぞれ2000億ドルだが、英国はニュージーランドよりもチェコとの貿易の方がはるかに多い。14年の英国のモノとサービスの輸出入額は、遠く離れた以前の植民地、ニュージーランドに比べて、そう近くもない欧州の近隣国、チェコの方が3.9倍も多い。
この例では、国々は貿易相手国をより好みしていない。英国は、スペインとクリケットの試合をさほどしないかもしれないが、かつての敵国である同国と、オーストラリアの3.3倍にのぼる貿易を行っている。スペインもオーストラリアも共に1兆4000億ドルの経済規模だが、英国人は、オーストラリアの長寿テレビドラマシリーズ「ネイバーズ」的な生活スタイルよりも、太陽とサングリアを求めて近距離のスペインへ旅行に行く方を好んでいる。
地理は依然貿易にとって重要であるものの、距離だけで貿易相手を決めるわけではない。市場規模も同様に重要だ。世界経済において中国の存在感が急速に増すにつれ、中国との貿易額もおのずと増えてきている。
■対英貿易をEUと中国で比べてみれば
中国は、英国の貿易において当然その割合を増やしているが、英国はその重要性を誇張すべきではない。中国の14年の国内総生産(GDP)は10兆4000億ドルだが、英国との貿易が占める割合はそのうち0.9%で、EUの経済規模に占める14年の英国との貿易割合である5.5%よりも断然低い。
英国の対EU貿易が、市場規模に対して断然大きいだけでなく、地理的重要性は低くなるどころが一段と増してきているようだ。10年前の04年、中国の対英貿易は、中国経済の1.4%と今よりも大きな割合を占めていたが、EUとの貿易の高い水準は基本的に変わっていない。