編集委員・石橋英昭
2016年2月28日11時01分
JR仙台駅に近い10階建てのビルから昨年暮れ、佐々木桜さん(35)は身を投げた。宮城県石巻市に同性のパートナーと住んでいた。遺書はなく、理由はよくわからない。自分らしくありたい、生きづらい世の中を変えたいと、もがいて、もがいていた。
一緒に暮らしていた佐々木敬海(ひろみ)さん(42)は女性の体で生まれたが、男性として生きている。2人は6年半前、ネットで知り合った。
精神科に通院し体調を崩しがちだった桜さんを、敬海さんは、震災復興工事の警備員の仕事をしながら支えた。桜さんは両親に恋人として紹介したが、理解が得られなかった。写真店を探し、一昨年10月、ウェディングドレスとタキシード姿で記念撮影をした。
2人で悩んだ末、その年の12月、養子縁組をした。敬海さんが養母、桜さんが養女で、同じ佐々木姓に。望んだ形とは違うけれど、正式な「家族」になった。
昨年6月、桜さんは同性婚の法制化を求める人権救済の申し立てに加わった。桜さんは取材に「異性カップルは堂々としていられるのに、同性だと公にもできないのは不公平だ」と答えていた。
8月には仙台、10月には横浜。性的少数者(LGBT)たちが集まるイベントに2人は出かけた。8月、記者へのメールに「ひとりで悩みを抱える当事者の方がたくさんいる。そういった人のためアクションを起こしたい」とあった。
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朝日新聞社会部
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