止まらない長期金利の下降傾向と銀行間の利下げ合戦
2016年3月融資分の10年固定最優遇金利(予定)
- 三井住友銀行0.9%
- みずほ銀行0.875%
- 三菱東京UFJ銀行0.8%
- 三井住友信託銀行0.7%⇨0.5%(3月)
- 三菱東京UFJ信託銀行0.74% ※
- みずほ信託銀行 取扱いなし
当初10年固定金利0.5%は年利0.5%の確定利回りの貯蓄と同じ
- 住宅ローン控除を受けられる10年間は約定通り元利均等返済する
- 住宅ローン年末残高の1%の住宅ローン控除を毎年全額受ける
- 住宅ローン減税を受けられなくなる11年目の1月に一括全額繰上げ返済する
2,000万円を当初10年固定0.5%で35年、ボーナス払いなし
11年目の1月にローン残高の約1,466万円を全額繰上げ返済すると、1月の利子23,177円が発生するだけですから、トータルで81万5,933円の『儲け』が確定します。
むろん、住宅ローンの完済によって住宅は名実共に自分のものになります。
つまり、10年間の元利均等返済額と貯蓄によって81万5,933円を儲けた上で2,000万円相当の不動産を手に入れたのと同じことになりますよね。
目安として、毎月12万円位を貯金できればこれが可能になります。共働きであれば十分可能ですし、親からの生前贈与でも可能となりますね。
3,000万円を当初10年固定0.5%で35年、ボーナス払いなし
3,000万円の住宅ローンを返済するのに必要な現金は、2,877万6,070円です(表右下)。
当初10年固定金利0.5%の約10年間に払う利子は130万2,282円です。これに対して約10年間の住宅ローン控除の額は256万900円。両者の差は−125万8,618円となり、実質的にマイナス金利になります。
11年目の1月にローン残高の約2,200万円を全額繰上げ返済すると、1月の利子34,765円が発生するだけですから、トータルで122万3,853円の『儲け』が確定します。
そして住宅ローンの完済によって住宅は名実共に自分のものになります。
10年間の元利均等返済額と貯蓄によって122万3,853円を儲けた上で3,000万円相当の不動産を手に入れたのと同じことになりますよね。
目安として、毎月18万円位を貯金できればこれが可能になります。さすがに厳しくなってきます、共働きと親からの生前贈与の合わせ技で可能というところでしょうか。
頭金をあえて温存しながら、3,000万円のローンが組める人も可能です。
4,000万円を当初10年固定0.5%で35年、ボーナス払いなし
4,000万円の住宅ローンを返済するのに必要な現金は、3,836万8,233円です(表右下)。
当初10年固定金利0.5%の約10年間に払う利子は173万6,370円です。これに対して約10年間の住宅ローン控除の額は341万4,600円。両者の差は−167万8,230円となり、実質的にマイナス金利になります。
11年目の1月にローン残高の約2,900万円を全額繰上げ返済すると、1月の利子46,354円が発生するだけですから、トータルで163万1,876円の『儲け』が確定します。
そして住宅ローンの完済によって住宅は名実共に自分のものになります。
10年間の元利均等返済額と貯蓄によって163万1,876円を儲けた上で4,000万円相当の不動産を手に入れたのと同じことになりますよね。
目安として、毎月24万円位を貯金できればこれが可能になります。さすがにここまでくると、かなりの高収入か、ご両親が資産家でなければ難しそうです。
なぜ三井住友信託銀行の10年固定金利がここまで安いのかに答えます
いくらマイナス金利で銀行間の競争が激化しているからと言って、なぜ三井住友信託銀行がここまで10年固定を下げてくるのか、気になりませんか?
そんなのどうでもいい?安けりゃいい?
それもそうですが、取引する限りは相手方の思惑をちゃんと分かった上でなければ、気持ち悪くてできません。そういう性分なんです。
まず結論から言います。3段論法です。
- 信託銀行は安全資産に投資しなければならないが、国債が高すぎる。
- 高すぎる国債の代わりとして住宅ローンの融資に流れた。
- 国債相場が高い限り、信託銀行は住宅ローンの金利を下げて利用者を集めざるを得ない。
信託銀行とは
信託銀行(しんたくぎんこう)とは、銀行法に基づく免許を受けた銀行のうち、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)によって信託業務の兼営の認可を受けたものを言います。
通常は銀行業務と信託業務の両方を営んでおり、信託銀行という商号をもちます。
(参考HP 信託協会)
三井住友信託銀行や三菱東京UFJ信託銀行は、信託銀行です。
信託業務はリスクを取らない
では信託業務とは何でしょうか。
信託とは、委託者が信託契約や遺言によって、信頼できる人(受託者)に対し金銭や土地などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のために信託財産の管理・処分などをすることです。
具体的には以下のような業務です。
- 金銭信託:顧客=委託者から預かった資金を株式や債券等で運用し、収益を配当する。商品名「ヒット」。
- 貸付信託:委託者から集めた資金を特定の産業に長期的に貸付け、その運用収益を配当する。商品名「ビッグ」。
- 年金信託:企業や個人からの年金基金を運用する。
- 土地信託:地主の依頼を元に業務を代行してビルや住宅の建設・管理を行い、家賃収入から経費を差し引いて地主に配当する。
- 証券投資信託:投資信託(ファンド)と呼ばれるもので、投信委託会社からの指示を受けて証券投資の運用を代行する。
つまり元本が減るリスクは基本取らない、ローリスク・ローリターンの投資が好まれているのではないでしょうか。
信託銀行のローリスク・ローリターンは決算にも表れています
EDINETから三井住友銀行と三井住友信託銀行の有価証券報告書と半期報告書を調べて資金運用利回り、資金調達利回りを比較してみました。
大まかに言うと、
- 銀行の収益=資金運用勘定×資金運用利回り
- 銀行の費用=資金調達勘定×資金調達利回り
です。この差額の利益で銀行員の給料やら、支店の家賃やら、を払っている訳ですね。
(EDINETより有価証券報告書、半期報告書の数値を抜粋)
三井住友信託銀行の方が明らかに収益性が悪いです。
資金調達利回りは両行とも0.3%程度ですが、資金運用利回りが全然違いますね。
なのに住宅ローンの金利を銀行よりも下げられる理由は、三井住友信託が資金運用でリスクの低い投資をしているからなのです。
三井住友信託銀行は国債の代替投資として住宅ローンを増やさざるをえない
ではどんな投資をしているのか、三井住友銀行と三井住友信託銀行の有価証券の保有内訳を割合で比べてみました。
(EDINETより2015年3月期の有価証券の内訳)
三井住友銀行と三井住友信託との大きな違いは以下の3点です。
- 国債:三井住友信託で保有割合多いのは、安全でリスクの低い投資をしなければならないから。
- 社債:中小企業向けに融資する方法のひとつとして銀行引受私募債というものがある。リスキーであり、主に銀行が行う。
- その他:三井住友信託のその他は、証券投資信託業務のために保有している金融商品だと推定される。
国債への投資が多いのが信託銀行の特徴ですね。しかし、一時は10年国債の利回りはマイナスになり、今は若干回復しているというものの、とてもじゃないですが、投資として買える利回りではありません。
そこで、国債に代わる投資として住宅ローンというわけです。信託銀行は銀行よりも余剰資金を安全資産で保有しなければならないニーズが高いのです。
まとめ
いかがでしょうか。もちろん人件費や家賃などの固定費が銀行よりも安いから金利を下げられるという側面もあるでしょう。
ネット銀行なんかはそうだと思います。しかし信託銀行はリアルな銀行ですし、都銀ほどではないにせよ、高給取りです。
信託銀行として顧客から預かっている資金の安全な投資先として国債が買えない状況下での苦肉の策、というのが千日の推理です。
信託銀行が既に持っている国債は次々と満期になって償還されて行きます。国債が高いからといって現金で持ち続ける訳にも行きません。
という事は、今の状況が続けば0.4%台位までは下がる可能性が十分にあるという事になりますね。
何年の国債をいくら持っているかは分かりませんが、バランスよく持っているでしょうから、徐々に減って行くことが推理出来ます。
ちょっとしたチキンレースの様相を呈しているんです。
以上、千日のブログでした。
千日のブログでは、住宅ローンはもちろんのこと、マンションに関する様々なお役立ち情報を公開しています。
情報は常に入手可能な最新のものに更新してます。よろしければ定期購読してみて下さい。
マイナス金利で住宅ローンはどうなるか
マイナス金利で実質金利ゼロの返済シミュレーション
マイナス金利で住宅ローン減税は確定利回りの貯蓄です
住宅ローンと税金のカテゴリー記事一覧