【ニューヨーク=山下晃】「過去240年に渡り米国に逆張りの投資をするのは最悪の間違いだった」「今も(逆張り投資)を始める時期ではない」。
米複合企業のバークシャー・ハザウェイを率いる著名投資家のウォーレン・バフェット氏は27日、毎年恒例となっている株主への手紙を公開した。手紙では米景気の順調な拡大に対して不透明感を指摘する声を一蹴し、楽観的な見方を強調した。
手紙では各党の代表を決める予備選挙がヤマ場に入る米大統領選に触れ「候補者らがこの国の抱える問題について多く言及する結果、多くの米国人は子供が自分より良い暮らしができないと信じてしまっている」との見方を示した。そのうえで「そうした考え方は絶対に間違っている」と強く主張した。
「米国の実質国内総生産(GDP)成長率が2%にとどまっていることを嘆く人もいる」が、十分な成長率であり、「政治家は明日の子供たちのために涙を流す必要は無い」と記した。かねて米国に強気な同氏だが、海外市場の影響を受けて米景気が腰折れするのではといった懸念がくすぶるなか、そうした悲観論と一線を画した。同氏は米民主党のヒラリー・クリントン候補を支持している。
バークシャー株は2015年に約12%下落し、ダウ工業株30種平均(2%安)を下回ったが、バフェット氏は「15年は良い年だった」と振り返った。同日開示された資料によると、バフェット氏が重視するバークシャー社の1株当たり純資産は6%増えた。
15年には過去最大の投資となる320億ドル(3.6兆円)を投じて航空・エネルギー業界向け金属部品製造の米プレシジョン・キャストパーツの買収を決定。200社を超えるバークシャー傘下の事業会社に加えた。「(バークシャーの)電話オペレーターはスタンバイして待っている」とさらなる買収に意欲を示した。
手紙では15年に同社の上場株式投資事業において中核投資先である「ビッグ・フォー」の米銀大手ウェルズ・ファーゴ、コカ・コーラ、IBM、アメリカン・エキスプレス各社の株式保有割合を高めたことも明らかにした。米国景気に強気な見方を背景に追加投資を実施し、「模造品を自分の物にするよりも、他人と共有してでも本物のダイヤモンドの所有者になる方が良い」と言及した。