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G20の経済政策 金融緩和依存に決別を

 最近の金融市場の動揺は、世界経済の実情を反映していない−−。上海で開かれた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は共同声明を採択し、株価や為替の激しい変動を警戒しつつも、市場の過剰反応だとする評価を示した。

     確かに、1年半ほどの期間に原油価格が1バレル=100ドル超から約30ドルまで急落した激変ぶりを、実体経済の要因だけで説明することは難しいし、株価指数が連日、乱高下を繰り返しているのも異様である。

     とはいえ、市場の一過性の過剰反応だと済ませてはならない。なぜ、世界の市場で、このようなパニック的な動揺が続くのか、主要国が取ってきた政策と照らしあわせて真摯(しんし)に分析することが大事だ。

     共同声明は、主要国が金融政策、財政政策、構造改革を実行する必要性を唱えた。ただし「金融政策だけでは均衡のとれた経済成長につながらない」とも付け加えている。これまで金融政策に頼り過ぎてきたことへの反省と解釈したい。

     最近の市場の混乱は、主要国の経済政策が中央銀行の金融緩和に依存し過ぎたことによる副作用の面が強い。麻生太郎財務相は、中国を問題視し、通貨人民元の安定化などを求めたが、新興国が直面する資金の国外流出や通貨安は、自国内の問題だけが原因ではないのだ。

     例えば、日銀や欧州中央銀行が進めるマイナス金利政策、量的緩和といった強力な金融緩和策は円安やユーロ安をもたらし、結果として、人民元の切り下げ圧力となる。米国の金融政策も人民元相場を不安定化させてきた。先進国の政策と密接に関係しているのである。

     G20に出席したカーニー英中央銀行総裁は、マイナス金利政策が「世界全体としては(一国の利益が他国の不利益となる)ゼロサムゲームになる」と述べ、拡大に警鐘を鳴らした。「通貨安競争はしない」と声明で唱えながら、事実上の通貨安競争につながる金融緩和を主要国が行うようでは、G20の信頼を損なう。

     これ以上、中央銀行の金融緩和策に依存しないという決意を行動で表すことこそG20が協調すべきことだ。

     その上で、これまで先送りしてきた各国の構造改革を、強い政治のリーダーシップによって実行する。そうしてはじめて、国によっては一時的な財政出動も正当化されよう。

     日本やユーロ圏のように、「できることは何でもやる」と金融緩和路線を突き進めば、市場をより不安定化させ他国も巻き込む。G20の協調精神に反するばかりか、世界経済の混乱が自国経済にも跳ね返ってくることを忘れてはならない。

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