元乗員制作の引き揚げ船模型 京都・舞鶴記念館に寄贈
戦後にシベリアなどから引き揚げ者を舞鶴港へ運んだ「興安丸」の模型が、京都府舞鶴市平の舞鶴引揚記念館に寄贈された。船でコック長を務めていた男性が親交のあった市内の夫妻に贈ったもので、「船のことを良く知る人が作っており、当時の船の状態も分かる」(同館の長嶺睦学芸員)という。
寄贈したのは同市余部下の川畑栄子さん(81)。亡くなった夫の正夫さんが、船が最後に引き揚げ者を舞鶴まで運んだ1957(昭和32)年ごろに、コック長だった守護守さん=北海道(当時)=から「世話になったお礼」として受け取った。
守護さんは、雑貨店を営んでいた川畑家と買い物をきっかけに親しくなった。毎夜のように家で語り合い、守護さんがカレーやハンバーグなどを調理して振る舞ったり、造船所で働いていた正夫さんを船の昼食に招いたりしていた。その後の守護さんの消息は不明という。
興安丸は引き揚げ船としてナホトカや真岡(樺太)などから約1万8千人を舞鶴に運んだ。模型(長さ約70センチ)は木製で200分の1のスケール。守護さんは船の修繕担当の工員に大工の腕を生かして作ってもらったと話していたという。装備や板張りなども細かく再現され、当時の船の様子が伝わる。
記念館所蔵資料が記憶遺産に登録されたことから、栄子さんが「家に残しておいてもなにもならない。お役に立てれば」と寄贈を申し出た。同館は5月から開催予定の新収蔵品展の期間中に公開する予定。
【 2016年02月24日 11時59分 】