早期返還に暗雲 米「辺野古移設2年遅れ」
政府は24日、米軍高官が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設が当初より2年遅れの2025年にずれ込む見通しを示したことに対し、普天間の早期返還を目指す日米合意に変わりはないことを強調した。ただ、米側で作業の遅れが明示されたことで、早期返還の難しさが改めて浮き彫りになった。
米太平洋軍のハリス司令官は23日、上院軍事委員会で普天間移設について「2年少し遅れている」と言及。一方、菅義偉官房長官は24日の記者会見で、移設先の名護市辺野古の作業状況に関し「具体的に申し上げる段階ではない。普天間の一日も早い返還のため、工事を着実に行っていく」と述べるにとどめた。
日米両政府は13年4月、返還時期を「22年度またはその後」とすることで合意した。ハリス氏の言及通り移設が25年になっても合意の範囲内だが、米軍幹部が遅れを明言するのは異例だ。中谷元(げん)防衛相は記者団に「順調に進めば5年で工事は完了する」と述べ、日米合意は維持されていると強調した。
しかし、政府は県との法廷闘争に入り、工事はずれ込んでいる。政府関係者は「県知事の協力がない中で順調な工事は難しい。5年の工期も日程を切り詰めた結果で、いつ終わるか言える状況ではない」と説明。政府は昨年10月に埋め立て本体工事の着手届を県に提出しており、今春以降に護岸工事を始める考えだ。
普天間を抱える宜野湾市の佐喜真淳(さきま・あつし)市長はハリス氏の発言について市役所で記者団に「理由がどうであれ、返還の期日が延びることはあってはならない」と懸念を示した。一方、翁長雄志(おなが・たけし)知事は記者団に対し、「県民の総合的な民意は世界一危険な普天間の早期返還だ。辺野古とは切り離し、まずは普天間の5年以内の運用停止という約束を守ることから始めてもらいたい」と政府に注文を付けた。【村尾哲、佐藤敬一】