和平協議を3月7日再開目指す
【カイロ秋山信一、モスクワ真野森作】内戦下のシリアで27日、一時停戦が発効した。2012年夏に戦闘が激化して以降、本格的な停戦は初めて。戦闘はほぼ収まっているが、首都ダマスカス郊外などでは27日も小競り合いが起きた模様だ。国連は3月7日に和平協議を再開したい考えで、停戦の持続が焦点となる。
複数の反体制活動家によると、政権側の空爆は停戦発効とともに沈静化。徹底抗戦の構えだったイスラム系の反体制派有力組織「アフラル・シャム」も当面の停戦順守を決めた。反体制派が実効支配する北西部イドリブ県の記者アブ・バラアさん(27)は電話取材に「連日続いた政権側の空爆は止まり、反体制派も停戦を守っている」と述べた。
一方、ダマスカス南郊や北部アレッポ県の反体制活動家は電話取材に「政権側が反体制派への銃撃を続け、停戦に違反している」と証言。政権側の国営メディアも「武装勢力がダマスカスの住宅地に向けて砲撃した」と報じ、非難の応酬となっている。
「(内戦下の)過去5年でシリア国民が事態の好転を期待できる最大の好機だ」。和平協議を仲介するデミストゥーラ国連特使は27日、停戦の持続に期待感を示した。特使は「小さな問題が起きても、すぐ制御するのが重要だ」と述べた。
一時停戦は米露などが提唱。アサド政権とクルド人勢力が停戦を受諾し、反体制派主要組織も「政権側の動向を見極める」として2週間の限定付きで停戦に応じた。ただ、第三者による停戦監視の枠組みはなく、履行状況の確認は難しい。
また、過激派組織「イスラム国」(IS)と国際テロ組織アルカイダ系「ヌスラ戦線」は停戦の対象外とされた。反体制派の一部はヌスラ戦線と共闘関係にある。ヌスラ戦線のゴラニ指導者は徹底抗戦を呼びかける声明を発表。中部ハマ県では27日、政権側支配地域で自動車爆弾テロがあり、ISが犯行声明を出した。
アサド政権を支援するロシアは27日、「停戦に参加する勢力への空爆を完全に停止した」と発表。同日に限り、「誤爆を避けるため」に全土で露軍機の飛行を停止したという。「テロ組織」の排除を掲げるロシアの空爆が、ISやヌスラ戦線に限定されるかどうかが停戦維持のカギになる。
ロシア軍参謀本部・作戦総司令部長のルツコイ陸軍中将は会見で「米露による停戦合意を支持する国連安保理決議を考慮し、誤爆の可能性を排除するため、27日はロシア軍機のシリア上空での飛行は実施しない」と述べた。
ルツコイ中将は「(ロシアが規定する)空爆対象から除外すべき74地区の正確な位置を米軍に渡した。米側からも同様の地図を受け取った」と語った。
和平協議は先月、約2年ぶりに開かれたが、反体制派とテロ組織の線引きなどを巡って紛糾。本格協議に入る前に決裂した。