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 財政破綻(はたん)して10年目を迎えた北海道夕張市をどう生き返らせるのか。鈴木直道市長に聞いた。

 ――夕張市が財政再生団体(当初は「財政再建団体」)に指定され、国の管理下で財政再建に乗り出してから、この3月で10年目に入ります。

 「当初は349億円あった借金は、3月末までに91億円を返す計算になります。財政の健全化が順調に進む一方で、人口は3割以上減少し、職員は253人から97人まで減るなどの大きな『副作用』が出てきました」

 「このままでは、血のにじむような思いで育ててきた地域の再生の小さな芽を摘むことにもなりかねない。結果として財政の健全化そのものも困難にしかねません」

 「1955年に制定された地方財政再建促進特別措置法における財政再建団体は、長くても10年程度の再建期間でした。第1次安倍政権で半世紀ぶりに改正された財政健全化法で、『第2の夕張になるな』を合言葉に予防措置がとられました。その結果、全国の自治体で財政の健全化が促され、14年度決算時点で財政破綻の懸念がある(イエローカードを出された)『財政健全化団体』はゼロになりました」

 「夕張市の再建期間は20年間を目標としていますが、以上のような背景を踏まえ、10年目を迎える今、計画を抜本的に見直す必要があると考えました。昨秋、(有識者による)第三者委員会を設置し、議論を進めてきました」

 ――検証委員会は3月上旬に報告書をまとめます。

 「夕張市はこれまで財政の健全化を何より優先してきました。地域の再生の優先度は低くせざるを得なかった。その結果、人口は減り、地域経済は疲弊しました。このままでよいのか、第三者委員会に検証いただいています」

 「第三者委員会は先月の懇談会で市民の声を聞きました。その中では、重くなっている財政負担を軽減してほしいという声もありましたが、それ以上に未来志向の政策を展開することに期待する声の方が大きかった、と聞きました。人口減少対策や子育て環境の充実、定住・移住の促進、新エネルギー政策(炭層メタンガス)、コンパクトシティーの推進。そして、毎年2月に開かれる映画祭のメイン会場となっていた市民会館の後継施設も含めた複合施設の建設です」

 ――それだけ多くの事業をするなら、少ない職員を増強しなければならないでしょう。

 「ご指摘の通りです。全国の市町村で最も少ない職員数と給与水準で、職員たちは退職を踏みとどまり、働いてきました。財政破綻(はたん)直後は市民から批判されていましたが、今は職員の姿を見て、状況(待遇)を改善してほしいとの声が市民から出てきました」

 「職員給与は当初は年収の40%カットでした。段階的に引き上げて、15年度からは15%カットまで改善しましたが、全国最低水準に変わりはありません。なお早急な改善が必要です」

 ――4月から始まる「企業版」のふるさと納税にも期待しているそうですね。

 「今年度、個人のふるさと納税によるご寄付は、全国のみなさんから2億円近くいただきました。市税収入8億円の本市にとって非常に大きな財源です。企業版は個人のふるさと納税より自治体に求められるハードルが高いとは聞きますが、企業の皆様に共感いただける事業をPRし、積極的に取りに行きたいと考えています」(聞き手・菅沼栄一郎)

     ◇

 1981年生まれ。埼玉県出身。法政大卒。東京都職員、夕張市行政参与を経て、2011年から現職。現在2期目。

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